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東方海恵堂 ~ Marine Benefit./海恵堂異聞:Migration to the conceptual sea./海探抄/之二

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BGM: 水底捜索隊 ~ Curiously deep field
「 あらーーー………」



 とびきり間の抜けた声と共に、あやおりちゃんの身体がふわりと氷のステージを外れる。そしてそのままあやおりちゃんはステージの外、広がる海の絨毯の上にちょこんと立ち戻りました。それを皮切りにあやおりちゃんが作った氷のステージが文字通り氷解して、穏やかな海に散らばっていた氷の塊もすっかり溶けてなくなってしまいます。まるで、最初から何も無かったかのように。
「 これは私の負けだわー。つくしさんでしたか?おめでとうございますー、あなたの勝ちですよー」
「………それは、はぁ…はぁ……ありがとうございます………はぁ……はぁ………」
 嬉しいとかそれ以前に、吐きそうです。
 それと言うのも今の遊び…私はあやおりちゃんをステージからせり出すだけなのですが、あやおりちゃんは私を近づかせまいと氷の弾幕をこれでもかと散らすのです。
 しかも一つ一つが冗談では済ませられない速度と鋭さで、時には私を目掛けて、時にはのべつまくなしに弾を散らすのです。それを避けながらあやおりちゃんに近付いて何とかするって、どこのシューティングゲームですか。うっぷ…



………


「 さて、つくしさんが勝ったので色々とお教えしましょうー」
 海の上に立ったまま、吐き気と激しい動悸を抑えるように深い深呼吸を幾度と無くやっていると、あやおりちゃんから話を持ち出してきた。
「 改めてー、私は海の姉妹の6女"海 あやおり"と言いますー。私たち海の姉妹はー、この海にやって来る人間の腕試しの為にー、ここに配されてますー」
「腕試し?」
「 はいー。最初は私がこうして遊びを交えて一人目をー、そしてこれを抜けたら私のお姉様達と相手をしてもらう様になっていますー」
「…といっても、私みたいな人間なんて他にいるとは」
 そう、私はあくまでも中津綿津見神を身に宿した現人神です。ですが、いくら八百万の神の国とはいえ、実際に神様とつるんでこんな場所に来る人間なんて…そう言いかけた時、あやおりちゃんからその疑問の答えがやってきた。
「 もちろん、ここに来られるのなら手段は問わないんですよー?重要なのはー、私に勝つことなのでー。漁船で来て頂いてもー、問題はありませんー」
「あぁ、そういうことですか…って」
 あやおりちゃんの楽しそうな顔を見ながら、私は自分がしでかした事を思い出して顔が苦くなる。
「と言うことは、私は今あやおりちゃんに図らずも勝ってしまったので…」
「 はいー。次の場所へご招待しますよー」
 そう、結果として私はあやおりちゃんに勝っちゃいました。それは、あやおりちゃんの説明に倣うなら"次に進む権利を得た"と言うことで…
「もちろん、拒否権はありませんよー」
 そういうことです。
 嫌な予感がします。意味もなくもてはやされて買いたくもないものを買わされる時のような、あの嫌な予感です。
「 では案内を…あぁ、そう言えばつくしさんは私が案内しなくても大丈夫でしたー」
 あやおりちゃんが私に背中を向けるように踵を返して直ぐ、私に顔を向けて少しばつの悪そうな顔をしてそう言いました。
「と、言いますと?」
「 普通は私が"この下"に行く準備をするのですが、つくしさんは神様に聞けば問題ないですからー」
 そう言って、あやおりちゃんは海面を下に指差した。これは、冗談でもなんでもなく海の中と言うことなのでしょう。
「………綿津見様、何とかな………るのですね。わかりました」
 綿津見様に話を聞くまでもなく、私の身体が大きな泡に包まれる。そして、綿津見様に促されるままに、海の中に落ちていくイメージをすると、身体がイメージに従って水の中へと沈んでいく。そして、泡ごと身体が全て海に入ってしまう寸前に
「 我々の"わだつみ"様によろしく~」
 と、最後まで間のずれたあやおりちゃんの言葉が耳を打った。



……………


 海を下に進んで、そろそろ明かりが恋しくなって、綿津見様の泡が仄かな光を発してからおよそ30分、海の地面が白砂の反射で露になる。
 今のところ、泳ぐ魚以外に人らしい姿は見当たらない。人並みの大きさの魚が私の周りを時々回遊するくらいで、変わったところは見当たりません。そして海の中の魚は、基本的に私を避けて通ります。大型の魚や、時折通りがかる危険な魚も例外ではありません。綿津見様曰く、それも一つの加護なんだとか。
 しかし。そんな神様との会話を楽しむのもそう長くは続かず、白砂の水底が見えてからしばらく、代わり映えの無い景色を見続けて思いました。
「もしかして、私たちは担がれたのでしょうか」
 思い返せば、そもそも話がつかめなさ過ぎます。元は町に蔓延している龍宮城の都市伝説を調べるための事。その為に沖を巡っていたら、自称人魚と相対して息を荒立てながらも勝ちをもらい、今現在は人魚に案内されるまま海の底…
「…あれ、そういえば船でここに来れた人もいるのでしたら、その人たちは…えっ?どうかしましたか綿津見様?」
 ふと考え事に意識をやっていると、綿津見様の言葉が音もなく頭に入ってきて、その言葉に導かれるままに視線を前に遣ると、代わり映えのしなかった水底の光景に、またもぽつんと人の姿を確認できた。
「あらあら、あやおりが人間を通したわね~。一ヶ月ぶりかしら」
 さっきのあやおりちゃんと同じ口調、ラピスラズリのような藍と金のウェーブヘア、線目と言うか瞑り目と言うか、さっきのあやおりちゃんと瓜二つの女の子が底にいた。
「初めまして~、私は海の姉妹の5番目"海 すいめい"と申します~、以後お見知りおきを~」
晴耕雨読人魚娘
海 すいめい/Kai Suimei
 そう言って、透けてないロングスカートをつまんでふわりと挨拶をするすいめいちゃん。さっきのあやおりちゃんと同じ苗字、瓜二つな相貌、そして深い海の底にあってその身一つで立っている不可思議さ…どうやらこれが正規ルートというもののようです。
「すいめいちゃん?がここにいると言うことはまた何かをするのですね」
「お察し感謝しますよ~。あやおりと同じように私もちょっとした弾幕遊びをしようと思います~。ただし~、"お姉"からの命令ですので、死なないように加減はしますね~」
 妹ちゃんの、刺されば人溜まりもないあの氷弾をして死なないようにと言うのは何かの言葉遊びなのでしょうか?
 そして、すいめいちゃんの口から出たお姉という言葉…確かあやおりちゃんは六女で、すいめいちゃんも5番目と言っていましたので、概ねあと3人を経ての一番上の長女の事を指しているのでしょう。
 どうやら、ここまで来たら否が応にもその"お姉"に会わないとお話は聞けそうにもありませんね。なら…
「ここまで来たら覚悟の上です、海の上の都市伝説の正体を探るために…」
 そう言って、水底の砂に空気で覆われた足を踏み込んで、すいめいちゃんに近づくための行動を始める。



………が




「不肖"檍原 つくし"推して参り………っ?!」




 名乗るより早く、私は自分の身体の違和感に気付いた。
 綿津見様の作った空気の泡の中で…
 息が……出来ない………!?
「んん……!?うぐ………!?」
 悶えるような苦しさの中、私はまたも同じような不自然な笑みをすいめいちゃんの顔に見た。その不自然な笑みの中に輝く瞳は、紺金の髪色より輝く蒼色をしていた。



「…それじゃあ、海の姉妹の5女"海 すいめい"その水を散らして参りますよ~」
BGM: 不正なエンタルピー