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東方海恵堂~Marine Benefit./海恵堂異聞:Migration to the conceptual sea./海探抄/九頭竜抄之一

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< 缠之二   海探抄   九頭竜抄之二 >


人が観測した深い海は深海と呼ばれる。
人が観測していない海は、果たして深海か?それとも………
BGM:冥界社殿は誰のもの?
 どうしてこうなったんでしょう。
「どうしてこうなったんでしょう」
「なんでアタシも行くし~…」
 檍原つくしです。

 心の声が口からだだ漏れつつも、私は海を進んでいます。

 海上異変の解決から少し経って、地上の噂も、私の身辺も落ち着いてきた今日このごろ。私はとある事情で海を探索しています。
「もー、京雅お姉、つくしに着いていくようにって説明する時すっごいニヤニヤしてたしぃ」

「あはは…」

 ちなみに、海恵堂の住人である海の姉妹の一人、天平ちゃんも一緒に来ています。私は天平ちゃんの事はよく聞いていないのですが、どうやら天平ちゃんの姉妹の長女である京雅さんから「腕を磨いて来い」だとかそんな感じの事を言われたようです。どうして歯切れの悪い言い回しになっているのかというと、私はこの件について京雅さんではなく、乙姫様から説明を受けたからです。
―――


「はぁ、海恵堂の下…ですか?」

「そう、そこにちょっと厄介な妖怪が居てね、せっかく巫女になったわけだし、その妖怪をちょっと調伏してきてほしいかなって」

「調伏って…そんなコンビニに行ってくるような感覚で…」

 天平ちゃんが私に着いてくる少し前、私は海恵堂にいらしていた乙姫様に呼び止められて、そんな話を聞きました。調伏とはすなわち打ち勝つことで、海の姉妹の皆さんに勝ち切るのもやっとの今の私には恐ろしく難題に聞こえて、私は乙姫様に怪訝な顔を向けました。
「まぁまぁ、せっかく海の姉妹達と戯れながら修行をしているんだし、その成果を発揮できる場所を用意しようって言う私からの好意だよ」

「それ、好意という名目の使い走りというオチじゃありませんよね?」

 乙姫様は、私の言葉に返答はしませんでした。
―――


「はぁ…本当に、どうしてこうなったんでしょう。NOと言える意思も、私には必要なのかもしれません」

 結局、何も言わずにニッコリと笑っていた乙姫様に渋々従うことにして、今に至ります。

 それで、今私はどこに居るかというと、海の中に居ます。

 ただし、それはただの海ではなく海の底も底、世に深海と呼ばれている暗い海の更に下へと向かっています。
「海恵堂の下って、まだ潜ることができるんですね」

「アタシも初めて知ったし。普段は海恵堂の前か、良くて海の上にいるし…」

 海恵堂の場所ももちろん深海なのですが、私たちは海恵堂の裏口から出て、その更に下へと進んでいっています。前に一度、海恵堂の主である海琴様に、海恵堂の深さを問うたことがあるのですが

(海恵堂は、人間が観測出来た一番深い所に常にあります)

 という煮え切らない答えを戴きました。そのことについて乙姫様にも聞いてみたのですが、帰ってきたのは勉強不足の一言。結局どのくらいの深さにあるのかはわからずじまいでした。
「人間が観測できた…一番深い所…?」

「ん?つくしどうしたし?」

 考えあぐねている私に気づいたのか、隣を泳いでいた天平ちゃんが声をかけてくる。

「その…海恵堂のある深さについてなんですが…」

「海恵堂の深さ?それならとっても深いところだし!」

 自信満々に、ある胸を張って答える天平ちゃん。時々思うのですが、どうして天平ちゃんだけこう…なんというか……地頭が…いえ、あまり言わないことにしましょう。
「でも、そのことならお姉に聞いたことがあるし。なんでも鳥?とか言う船がどうとか…んー、よく覚えてないしぃ………」

「鳥、船………天の鳥船という話は聞いたことがありますが…」

「そんなんじゃないし。えっと…えーっと………」

 天平ちゃんは、しばらくそのまま左右に頭を捻っては何かを思い出そうと唸っていましたが、結局十数分経っても答えは出ず、有耶無耶のまま深海を進んで行きます。
………


 深く進んでどれくらい時間が経ったでしょうか。暗闇の海をあてもなく進んでいると、私たちは白い砂に覆われた地面にたどり着いた。

「白砂があるということは、ここが一番深い場所でしょうか?」

「すいめいの居た場所に似てるし」

 足を着けられる場所にたどり着いたのだろうと思い、降り立って周囲を見回す。私を覆っている綿津見様の泡がぼんやりと発光して、周囲を少しだけ照らしてくださいましたが、ぼんやりと明るいだけでは、周りに何があるのかはわかりません。
「綿津見様、もう少し明るくできますか?…えっ?」

「どうしたし?わたつみ様なんて言ってるし?」

 私が綿津見様に明るさを問うと、綿津見様は私に「今向いている方向に進むといい」とおっしゃいました。今のところ、何かが見えるわけでは無いのですが、綿津見様はそんな疑問を知ってか「進めば分かる」と促します。

「えっと、今向いている方…どっち向きというのかわかりませんが、綿津見様はあちらへ進めと仰っています」

「じゃあつくしのわたつみ様に従うし!」
 疑い半分で綿津見様の話を天平ちゃんに告げると、天平ちゃんは疑うことなくその方向へ進み始めた。私はいきなり歩き出した天平ちゃんとはぐれないように、慌てて天平ちゃんの後を追っていった。

「…へ、あぁはい。すみません、私の勉強不足ですね」

「つくし、今度はわたつみ様なんて言ってるし?」

 歩きはじめてすぐに、私は綿津見様から一言お叱りを受けてしまいました。私の謝辞を聞いていた天平ちゃんは後ろに居た私を振り返った。

「いえ、さっき私が天の鳥船の話を口にしたのですが、綿津見様から"そもそも鳥之石楠船神は空渡る船とその神であって、潜水艦のように潜るものではない"とご指摘をいただきました」

「ふーん………」

 綿津見様が、私の頭の中に割り込むようにそんな話をするあたり、結構気になっていたことのようです。


「………あぁっ!!」



 しかし、そんな綿津見様の話をした天平ちゃんは、何かを思い出したように私に振り返った。

「思い出したし!潜水艦だし!海を潜れる人間の船だし!」

「潜水艦…あぁ、さっきのお話ですか?」

「そうだし!それをお姉が言ってたし。確か…そう、トリエステ!なんとか・トリエステとか言う潜水艦が、こう…海恵堂の何かに関係があるって言ってたし!」
 潜水艦。たしかにそれなら深い海を渡ることができるでしょう。しかし、潜水艦の歴史や情報には全く詳しくないので、トリエステという潜水艦がどのようなものなのかはわかりません。うろ覚えですが、小さい頃に"しんかい"という名前の日本の潜水艦が教科書に載っていたような気はしますが、それも幼い頃の話ですし。

「とりあえず、今度潜水艦について調べてみましょうか…って」

 そんな独り言めいた呟きを零してすぐ、私と天平ちゃんはおもむろに目を見開いて自分たちの進む先を見つめた。

………



「な………」

「こ、これ………なんだし………?」

 深海の更に深い所、何かを灯してなければ一寸先も闇という場所で、私と天平ちゃんの目に映ったのは、

 海恵堂の城下町以上に厳かに整えられた石畳と参道

 その参道に連なる、さながら千本鳥居と表現できる、朱塗りの無数の鳥居

 そして、その二つを怪しく灯す石灯籠

「これは、神社の参道…なのでしょうか」

「ほえ~………」

 海恵堂とは趣の違う、静かでシンプルで存在感のあるその場所に、私も天平ちゃんも言葉を失った。しかし、どうしてこの深海にほぼ完全な形で地上の建築物に近いものが存在しているのでしょうか。

 恐る恐る近づきつつ、深海の地に建てられている鳥居の一つに触れてみる。つやつやした滑らかな感触が、綿津見様の空気の膜越しに感じられます。そして、石畳に目をやってその一つにも触れて見ると、海恵堂の成形したようなきめ細かい石材ではなく、粗削りで無骨な、ゴツゴツした石材をはめ込んで作られていることがわかります。

 鳥居や石畳がどれだけの間ここに有ったのかはわかりませんが、木のささくれや剥がれた跡が無い真新さすら感じる鳥居、ゴツゴツしながらも、人が歩きやすく整えられた石畳の参道。それはつまり…

「こんな深海で、誰かがこの場所の手入れをしている………?」

「そんな!?だってここは海恵堂より深いところだし?こんな場所に、誰が来て…」

 私の呟きに天平ちゃんが驚愕する。しかし、すぐに何かを思い出したようにハッとして口を噤んだ。
"海恵堂の下に、厄介な妖怪が居る"


 ここに来る前に乙姫様から命じられた内容を思い出す。

 私と天平ちゃんがこの場所までやって来た理由。

 誰かが手入れをしているらしい石畳と鳥居の参道。

 つまり、誰かがここに来て手入れをしているのではなく"誰かがこの神社に暮らしている"事を意味しているのでしょう。
「つくし………」

{{color:#FFCC00|「えぇ…どうやらここが目的地みたいですね」}

 何が待ち構えているのかわからない神社のような場所。その入口でしょう鳥居と参道を、私と天平ちゃんは、足をついて歩き進んでいった。