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东方儚月抄 ~ Cage in Lunatic Runagate./第五话/中日对照
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果てしなく低い地上から | 自无比低矮的地上 |
この地球に生きている者なら誰でも知っているように、月は常に同じ面を向けて地球の周りを回っている。地上ではいつ見ても何処から見ても月の姿に変化は無い。 | 正如生活在这个地球之上的所有人都知道的那样,月亮在围绕地球转动的时候总是以同一面朝向地球。所以当你身处地球之上,不管什么时候在任何位置看到的月亮都是一样的。 |
この事から、昔は月は天蓋に描かれた絵と思われたりした。常に同じ模様が映し出されていたから、人間はその絵を様々な物に喩えた。兎もそのうちの一つである。 | 所以在很久以前月亮被看作是被描绘在天空之中的图画。因为总是相同的样子,所以人类将这幅图画比喻为各种各样的东西。而兔子就是其中之一。 |
何故月は同じ面を見せて回ることが出来るのか、その理由は単純で月の自転周期と公転周期が高い精度で同期しているから1ある。地球を一周するのと同じ期間で自分が一回転すれば月は決して裏側を見せる事なく地球の周りを回る事が出来るだろう。ハンマー投げのようにボールに紐を付けてグルグル回しているような物である。ボールが一回転(自転)するのと同時に、自分の周りをボールが一回転(公転)しているのが判る。 | 为什么月亮能够一直以同一个面对着我们,其实原因很简单,只是由于月亮的自转周期和公转周期保持着相当高的精密度的同期性。在围绕地球旋转一周的时间里自己也同时完成一圈自转的话,月亮便可以永远不将背面朝向地球。就好像链球运动员投掷链球,把绳子系到球上转来转去一样。链球旋转一圈(自转)的同时,链球还围绕人自己旋转了一圈(公转)。 |
しかし疑問は残る。果たして何故、月はそのような周期を持つようになったのだろうか、という事だ。 | 但是仍然留有疑问。那就是究竟为什么,月球会拥有如此精准的周期呢。 |
月の民が地上から身を隠して絢爛豪華な生活を送られる様に月を改造したのだろうか。それとも、都を載せた裏側が重たくて遠心力で外側を向いてしまったのだろうか……。 | 难道是月之民为了躲避地上人从而能过着奢华绚丽的生活而将月球改造了吗?还是说承载着月之都的背面因为太重,由于离心力一直朝向外侧呢……。 |
だがしかし、その理由は極めて科学的で非常にくだらないものである彼女——八雲紫は知っていた。 | 但是,那个理由极具有科学性是非常没意思的东西,她——八云紫清楚地知道这一点。 |
大きな天体に働く引力の性質により、簡単に説明出来てしまう。それは極めて論理的で幻想郷にそぐわない理由であった為、彼女は別の理由を考える事を余儀なくされた。 | 只要根据在巨大天体上起作用的引力的性质,就能够很简单的说明其道理。但是这个解释太过于理论化,不适合幻想乡,所以她不得已只能思考另外的解释方法。 |
幻想郷は外の世界と常識の結界により断絶され、非常識の内側に存在する。この結界を今のまま保持する為には全ての事柄に裏側が必要なのである。 | 幻想乡与外面的世界由一个常识的结界所隔绝,存在于非常识的内侧。为了保持这个结界,任何事物都需要反面。 |
——新月の夜。 | ——新月之夜。 |
月が影に覆われ見えなくなる夜の月を新月という。しかし何故新月と呼ぶのか、新暦に慣れた私達には理解しにくい筈なのに誰も疑問に持たない。 | 月亮被影子所覆盖看不到的那个夜晚的月亮,便被称为新月。但是为什么会被称为新月呢,对于已经习惯了新历的我们来说应该是很难理解的东西,但谁也不抱有疑问。 |
私は月を見る為によく幻想郷の湖に出かける。今夜も私は湖上で新月を眺めていた。当然、湖には何も映っていない。 | 我为了观察月亮,经常去幻想乡的湖边。今夜我也在湖上眺望着新月。当然湖中没有映出任何的东西。 |
しかし、私には見えていた。眩しい日の光に照らされている月の裏側が。 | 但是,我却能够看得见,那被眩目的日光所照耀着的月亮的背面。 |
「紫様」 | “紫大人。” |
目の前の狐が私を呼ぶ。目の前の狐——八雲藍は私の忠実な式神である。 | 眼前的狐狸称呼我道。眼前的狐狸——八云蓝是我忠实的式神。 |
「紫様。どうやら吸血鬼のロケットが完成した様子です。私も見てきましたが、あんなので飛んで大丈夫なのか心配になる代物でした」 | “紫大人。吸血鬼的火箭似乎已经完成了的样子。之前我也去参观了一下,不过实物很让人担心是不是真的能飞起来啊。” |
藍はそう言うと口元を少し歪ませた。それは吸血鬼のロケットに対する嘲笑か、それとも幾度となく報告を受けていたのにも関わらず何にも対策をしなかった私への不信の現れか。私としては後者であって欲しかった。 | 蓝说完嘴角稍微抽动了一下。这是对吸血鬼火箭的嘲笑吗,还是对于接到无数次报告却依然没有采取任何对策的我的不信任的表现呢?对于我来说更希望是后者。 |
「へぇ。それはそれはさぞかし賑やかな完成パーティだったでしょうね。でも、何故私を呼ばなかったの?」 | “哎。可以想象那的确是一场盛大热闹的完成宴会呢。但是,为什么没有叫我啊?” |
藍が私に隠れてこっそりパーティに参加していた事くらい気付いている。 | 蓝背着我偷偷去参加了那场宴会的事情我还是可以发现的。 |
「あ、いやまぁ。好きで参加した訳じゃないんですけどね。偵察ですよ、偵察。ちょっと様子を見にって感じで……。もしかして紫様も誘った方が良かったですか?」 | “啊,不是的。我并不是因为喜欢才去参加那个晚会的。其实我是去侦察的,侦察。就是去看看那边的情况……看样子还是叫上紫大人一起去更好一些吧?” |
「ええ、誘われたら喜んで断ったのに。ところで、月の公転周期って何日でしたっけ?」 | “是啊,你要来叫我的话我就能很高兴的拒绝了呢。话说回来,月球的公转周期是多少天来着?” |
「へ? 月の公転周期ですか……? えーと、一般に約二十八日と言われていますが、実際には二十七日と三分の一日程度しかありません。ただ、地球も公転していますので新月から満月を経て新月に戻るまでの周期で考えた場合、一般に三十日と言われてますがこれも実際には二十九日と半日くらいです。ってそう言う事は私より紫様の方が詳しいのではないですか?」 | “哎?月亮的公转周期……?我想想,一般来说都认为大约是二十八天,实际上只有二十七又三分之一天的程度而已。只不过,因为地球本身也在公转所以要考虑从新月到满月再回到新月这个周期的话,一般来说都认为是三十天,不过这个实际上也就只有二十九又二分之一天这么多。我说这种事情紫大人不是比我要清楚多了吗?” |
「そうよね、公転周期は二十八日ではなく、満ち欠けの周期も三十日ではないのよね。これは重要項目だわ」 | “是的,公转周期并不是二十八天,盈亏的周期也不是三十天呢。这可是重要项目哦。” |
新月とは旧暦では一日である。月が生まれ変わるという意味でこの日の夜の月は新月と呼ばれているのだ。同様に、三日は三日月、十五夜は満月と旧暦では日付と月齢は一致していた。今よりも月の満ち欠け中心の生活だったのだ。 | 新月在旧历之中是每个月的第一天。因为表示月亮重生的意思所以将这天晚上的月亮称为新月。同样,第三天被称为三日月2,十五的晚上就是满月,旧历上的日期与月龄是一致的。那时候人们的生活比现在要更加以月亮的盈亏为中心。 |
「一日が新月であり、十五夜が必ず満月になる為には一月が三十日でなければならない」 | “为了让第一天是新月,十五夜必然是满月,一个月就必须要是三十天。” |
「ええそうなりますね」 | “嗯嗯,就是如此呢。” |
「でも、月の周期は三十日ではない。そのお陰で実際は十五夜が満月になる事の方が少ないのです。不自然だと思わない?」 | “但是,月亮的周期却不是三十天。因此实际上十五夜是满月的情况反而少见。不觉得很不自然吗?” |
私がそう問うと、目の前の狐は少し考え込んだ。 | 听到我这样问,眼前的狐狸不由得思考起来。 |
「十五日目の夜は完全な夜である筈なのに……そうですね、何者かが意図的にずらしたのでしょうか?」 | “第十五天的晚上应该是完全的夜晚才对……确实啊,是有什么人故意将时间错开了吗?” |
「それだけではありません。判っていると思うけど、公転周期と同じく、自転周期も二十七日と三分の一日なのですが……貴方にはその理由を調べて来て貰いましょう」 | “不只如此。我想你也知道的,和公转周期一样,自转周期也是二十七又三分之一天……那么就请你去调查调查其中的理由吧。” |
調べてと言ったが実際には自分で考えて欲しいと思っている。ただ調べるだけなら | 说是调查,其实就是想让她自己去思考一下。只是调查的话, |
「はあ、まあ良いですけどね。それより吸血鬼のロケットの話ですけど……」 | “哈,也行。比起那个,关于吸血鬼的火箭的事……” |
——三日月の夜。 | ——三日月之夜。 |
三日月は月の剣とも呼ばれる。見た目の鋭さを剣に喩えたのだろう。 | 三日月又被称为月之剑。是把月亮那尖锐的外观比作剑的吧。 |
その剣を持った月に抵抗するように空には一つの大きな流れ星が昇っていた。流れ星は大気の毒気で燃え尽きる宇宙の屑だと聞いているが、それが昇るというのは地上の屑が燃え尽きているのだろうか。 | 仿佛向拿着那把剑的月亮发出抵抗一般,一颗巨大的流星从地上升空了。据说流星是被大气层摩擦烧尽的宇宙的尘埃,那么向上飞去的就应该是大地的尘埃在燃烧殆尽吧。 |
「紫様。見えますか?」 | “紫大人,看到了吗?” |
「見えますよ。そんなに近寄らなくても」 | “看到了哦。就算不靠得那么近。” |
「いや私じゃなくて……。空に一筋の光が昇っていますでしょう? ついに吸血鬼のロケットが発射された様です。あの光はそのロケットなのです」 | “不是说我啦……空中不是有一条光柱升上去了吗?看来吸血鬼的火箭终于发射上去了。那道光就是那个火箭发出。” |
「うふふ。だからそんなに近寄ってこなくても見えますわ」 | “呵呵呵。所以说就算不靠近也能看得见啊。” |
「そうですか。あのロケットですが、発射速度から見て満月の頃に月に辿り着く様に計算されていると思います」 | “是吗。关于那个火箭,从发射速度来看我想她们应该计算好了在满月的时候能到达月球。” |
「そう随分とのんびりした旅行ね。それじゃ私達の方が先に着いてしまうかも……」 | “还真是一场相当悠闲的旅行呢。看样子我们也许应该能够比她们先到……” |
藍は不思議そうな顔をした。 | 蓝一脸不可思议的表情。 |
「いや、私達も満月の日に出発する予定ですし、一瞬で月に着いてしまうのですから吸血鬼達とほぼ同時にあると思います……って、気になっていたのですが紫様は何故あの吸血鬼を月に向かわせたのでしょう?」 | “哎,我们预定是在满月的那一天出发吧,因为一瞬间就能够抵达月亮上面,我想大概是和吸血鬼她们几乎同时抵达……话说,我一直很在意紫大人您为什么要让吸血鬼那帮人上月球呢?” |
「あら、私は吸血鬼を月に行かせたいなんて一言も言ってないわ」 | “啊啦,我可从来没说过想让吸血鬼上月球去哦。” |
「それはそうですが、止めさせようと思えばいつでもチャンスはありましたが、それもしませんでした。吸血鬼のロケットの肝は霊夢の力ですが、その力も紫様が修行させたもの。自分の力で月に行きたがっていた吸血鬼に話を持ちかけて、わざわざ時間を与えてやってその間、紫様はただ見ていただけ。これでどうしてそのような事が言えましょう」 | “话是这么说没错,但如果您想阻止的话随时都有机会的,结果却没这么做。吸血鬼的火箭最关键的部分是灵梦的力量,而那个力量也是紫大人您让她修行得来的。把消息透露给想靠自己的力量上月球的吸血鬼们,还特意给她们时间,在这期间紫大人您只是在一旁静观。这样怎么还能那么说呢?” |
「……三日月は月の剣とも呼ばれます。あの鋭さを見ればそう呼ばれるのも頷けます。その剣の月を選んで | “……三日月被称为月之剑。谁看到那尖锐的外表应该对这个称呼也会表示赞同。选择剑之月,发射 |
月の都には神の剣を扱う者がいる。地上には神の弾を撃つ者がいる。ただそれだけの事だ。 | |
「藍。貴方は私の命令を聞いていればいいのです。私達は満月の日に湖に映った月から月面へ乗り込みます。その準備を怠らないように」 | “蓝。你只要听我的命令就好了。我们将在满月之日,通过湖中映出的月亮进入月面。你不要怠慢了准备工作。” |
——半月の夜。 | ——半月之夜。 |
雪が舞っていた。今夜は天気が優れないが、満月の時には必ず晴れるだろう。 | 天空飘起了雪花。虽然今天夜里的天气并不是很好,但满月之夜一定会是个晴天吧。 |
月は剣から弓へと姿を変えた。半月はその形を弓に喩え、弓張月ともいう。 | 月亮从剑变成了弓的形状。把半月的样子比喻成弓,所以又被称为弓张月。5 |
剣の時は晴れていたのだが、あいにく弓の姿は見えない。弓を操る者は月には居ないのだろうか。 | 剑形的时候虽然天气晴朗,但很不凑巧弓形的样子就看不到了。难道是因为操纵弓的人不在月亮之上的缘故吗?6 |
「紫様。お寒いのでお屋敷に戻ったら如何でしょう?今夜は月は見えないですし」 | “紫大人,天气太冷了还是请您回房好吗?而且今晚也看不到月亮。” |
「あら、お月見は月が見えない方が楽しめるのよ。もしかしたら弓張月は紅魔館の地下にいるのかも知れないけど」 | “哎呀,赏月就是看不到月亮才更加有趣哦。而且也许弓张月就在红魔馆的地下也说不定呢。7” |
「はあ、そうですか。そういえば先日言っていた月の公転周期の話ですがーー」 | “哈啊,是吗。说起来前几天说到的关于月亮公转周期的问题——” |
藍は話題を変えた。もう少し話させてくれれば藍にも理解できたのかも知れないのに。 | 蓝转变了话题。要是能够将刚才的话题继续让我说下去的话,也许蓝也能够理解了呢。 |
「どうやら公転周期が後から調整された可能性が強い事が判りました」 | “我发现,似乎公转周期在后来被调整过的可能性很高。” |
「どういう意味かしら?」 | “这是什么意思?” |
「元々は天の道の通り、月は丁度二十八日で一周する物でした。ですが、月の異常な自転運動が公転周期を僅かに狂わせた」 | “本来按照自然规律,月亮是正好二十八天转一周的。但是月亮异常的自转运动稍微打乱了公转周期。” |
藍は大きな自転する物体にかかる引力の特性を説明し始めた。月は地上の引力と自分の引力の兼ね合いにより、自らの天体の形を僅かに楕円形に変形させる。その変形が自らに掛かる引力を歪ませ公転運動をブレーキないし、加速させる。自転周期が公転周期より短いと自転の速度を落とし、逆に長ければ自転の速度を速めようとするのだという。 | 蓝开始解释巨大的物体自转时其引力的特性。月亮在自身引力与地球引力的双重作用下,让自己的天体的形状变形成了有些接近椭圆的形状。这种变形歪曲了自身受到的引力使得公转运动失去了制动,不断加速。于是月亮在自转周期比公转周期短的时候便降低自转的速度,相反长了的话就加快自转速度。 |
藍は回転する二点間の引力の計算を具体的な数値を示して説明してくれた。 | 蓝把旋转的两点间引力的计算用具体的数字进行了说明。 |
「そういう理由ですから、自転を極端に狂わせて公転を遅らせた者が居る可能性が高いです。一日の三分の二も狂ったとすれば、誤差の範囲ではないですし」 | “如上理由所述,很可能有人通过极端地改变自转速度让公转变慢。如果一天的三分之二都是失常的,这已经超过误差的范围内了。” |
「それで、貴方の結論は?」 | “那么,你的结论是什么?” |
「公転を速めた理由として考えられる事は、常に地上を観測出来るように同じ面を向け、完全な朔の日(*注 新月の日)を消して、一年中地上を見張れるようにしたとか……。いずれにしても随分と昔の話になりますが」 | “加快了公转速度的理由,可能是为了能够时刻观测地上而将同一面对准地上,从而消除完全的朔日(*注 新月之日),使得一年自始自终都能够监视地上……。无论如何这都是很久以前的事了。” |
式神は単純な計算ならば右に出る者は居ない。しかし外の世界では引力の計算は三点以上から影響を受けただけで、計算が非常に困難になってしまうという。引力の計算は今の式神を持ってしても8手に負えないと言われている。 | |
しかし実際は式神が手に負えないのではない。式神に | 不过实际上并不是式神没办法应付得了,而是对式神下达 |
言うまでもなく、私が欲しい答えはそんなつまらないものではなかった。 | 当然,我所希望的答案并不是那么无聊的东西。 |
「そう、有難うね。やっぱり式神の欠点はそこよね」 | “是吗,谢谢了。果然这就是式神的缺点呢。” |
「はい?」 | “嗨?” |
「調べるとすぐに答えが出てしまう」 | “调查之后立刻就可以得出答案。” |
「そうですね。紫様が私に何か別の物を調べさせたかったとは思ったのですが、私はあいにく式神なので命令された事以外の行動は出来ないのです」 | “是啊。虽然我也认为紫大人是想让我调查其他的事情,但很遗憾,我只是式神,所以没办法进行命令以外的行动。” |
「あーあ、つまらないわ。貴方にはがっかりさせられるし、吸血鬼には月に行かれるし」 | “啊啊,真是好无聊啊。你这个家伙如此令我失望,吸血鬼也给放跑到月球去了。” |
「……あと、満月まで一週間ほどですね。結局協力してくれる者は居ませんでしたねぇ」 | “……还有一个礼拜就是满月之夜了。结果能够帮忙的人一个都没有。” |
「あら、私が嫌われているみたいな言い方ね。でも、協力者は沢山居るじゃない。ざっと数えても七、八……九人は」 | “哎呀,这么说好像我很被人讨厌似的。不过,不是有很多帮忙的人吗。随便数数也有七、八……九个人吧。” |
「そんなに居ますか? うーん……私の知らないところで何かあったのでしょうか」 | “有那么多吗?嗯……在我不知道的地方又发生了什么事情吗。” |
「貴方は天文学的な計算が出来るのに、一桁の足し算は出来ないのね」 | “你虽然能够进行天文学方面的计算,但是一位数以内的加法却不行呢。” |
——満月の前日。 | ——满月前日。 |
空には満月と見紛う程の大きな月が浮かんでいた。地上から見たら明るく見える月だが、満月は月の裏側にとっては夜の訪れを意味する。今頃月の裏側では夕焼けが見える頃かも知れない。 | 天空中悬挂着一轮好似满月一般巨大的月亮。虽然从地面上看去月亮十分明亮,但是满月对于月亮的背面来说却意味着夜晚的到来。也许现在月亮的背面正好能够看到夕阳吧。 |
「いよいよ明日ね。記念すべき第二回目の月旅行」 | “终于就要到明天了,值得纪念的第二次月之旅行。” |
「紫様。そろそろ月に行ってからの段取りを教えて頂けませんか? 紫様を信用してはおりますが、流石に何も判らないままですので心配です」 | “紫大人。差不多可以将去了月亮后的计划告诉我了吗?虽然我非常信任紫大人,但是什么都不知道的话果然还是有点担心。” |
「うふふ。そうね、そろそろ貴方に命令して | “呵呵。是啊,也该命令你去 |
「そうして頂けると助かります。それにしても、大昔に月に攻め入った時とは大違いですね。昔は最強の妖怪軍団を集めて意気揚々と攻め込んだと言ったじゃないですか。それでも敵わなかったというのに、それに比べて今回の……言い方は悪いですが気の抜けよう……人数も少ないし、何か無計画にも見えますし、失礼ですがとても敵うとは思えないのですが」 | “那样的话真是太好了。话说回来,这次和以前那次的月球进攻非常不一样呢。过去那时候不是说集结了最强的妖怪军团意气风发的攻过去的吗。但就算那样最后还是不敌对手,与之相比这次的……说句不好听的话感觉很没气势啊……人数这么少,而且也没有一个明确的计划,容我失礼说一句感觉没什么胜算啊。” |
「貴方には重要な事を教えてあげるわ」 | “让我来告诉你一件重要的事吧。” |
私は僅かに端がぼやけた月を見た。あのぼやけた部分が全て晴れた時、地上と月は行き来できるようになる。それを行えるようになったのはそれ程昔の話ではない。精々、千年前くらいだ。 | 我看着边缘还微微有一些模糊的月球。当那模糊不清的部分全部明亮之时,地上与月亮之间就可以相互往来。能这么做不是很久以前的故事。顶多是一千年前而已。 |
「地上の民は月の民には決して敵わないのよ」 | “地上人是绝对敌不过月之民的哦。” |
藍は不思議そうな顔をした。 | 蓝一脸不可思议的表情。 |
「え? 決して敵わない……?」 | “哎?绝对敌不过……?” |
「遥かに進んだ科学力、強靭な生命力、妖怪には手に負えない未知の力。地上の民は月の民には決して敵わないわ、特に月の都では」 | “遥遥领先的科学技术,强韧的生命力,妖怪无法应付的未知力量。地上的居民绝对战胜不了月之民,特别是月之都的话。” |
「そ、それでは今になって何故、もう一度月に攻めようと思ったのです? おかしいじゃないですか。本当はそんな事思ってないんですよね?」 | “可、可是既然如此又为什么要再次进攻月亮呢?难道这不是非常奇怪吗。实际上您不是那么想的,对吧?” |
「いいえ、やはり敵うとは思っていません」 | “是的,果然还是没什么可能敌得过。” |
「……では、明日は何をしに行くのでしょう?」 | “……那么,明天我们又是去干嘛呢?” |
「月の都から新しい幻想郷の住人が現われたのよ? それなりのお返しを頂かないと。そう、住民税みたいなもんね」 | “月之都那边不是有人新搬到幻想乡来住了吗?所以我们必须收取相应的回礼。对,就是类似于住民税之类的东西。” |
「はい? なんですかそれは」 | “嗨?那是什么东西?” |
皆、好き勝手に暮らし自由を謳歌している様な幻想郷だが、実際住んでいる者は決して自由を約束されている訳ではない。皆の最低限の自由を確保する為には、ある程度の決まりのようなものが必要となる。それが少なからず不自由を生む。しかしその不自由は、皆の自由の為には必要な事である。 | 乍一看大家可以自由自在地在幻想乡生活并且讴歌自由。实际上对于居住在其中的人来说,自由并没有被约定。为了保证大家最低限度的自由,就必须要有一定程度的规则一样的东西。这样会产生很多的不自由。但是那种不自由,对于大家的自由来说是有必要的。 |
例えば、幻想郷の人間は常に妖怪に襲われる危険があるが、その恐怖を甘んじて受けなければならない。 | 比如说,幻想乡之中的人类经常有受到妖怪袭击的危险,可是他们却不得不忍受这种危险。 |
人を襲う事を忘れてしまうと自らの存在は危うくなってしまうから、妖怪は人を襲う。 | 因为一旦忘记袭击人类的方式他们自身的存在就会受到威胁,因此妖怪才袭击人类。 |
しかし幻想郷に住む者の生活は妖怪の手によって支えられているのである。妖怪が居なければ幻想郷は崩壊してしまうのだから、人間は妖怪に対する恐怖を完全に拭おうとはしない。人間が自分を襲う妖怪を全て退治してしまったら、その時は幻想郷は崩壊してしまうだろう。 | 但是居住在幻想乡的人们的生活都是由妖怪之手支撑起来的。一旦妖怪不存在了幻想乡就将崩溃,所以人们才不会试图完全消除对妖怪的恐惧。假如人类降伏了所有袭击自己的妖怪的话,到时候幻想乡就将崩溃吧。 |
逆の事も言える。妖怪が襲う人間が居なくなってしまったら、妖怪も自らの存在意義を失ってしまう。だから、妖怪は人間を襲うが無闇に食べたりはしない。里の人間は基本的には食べてはいけない約束なのだ。 | 反之,假如没有了供妖怪袭击的人类的话,妖怪也将丧失自身的存在意义。因此,妖怪虽然袭击人类,但绝不会胡乱捕食。按规定,一般来说不能吃村子里的居民。 |
「新しく住人となった月の民は、妖怪ではなく人間である事を選んだの。つまり、永遠亭のあの者達は人間を選んだのよ」 | “新住下的月之民,没有选择妖怪而是站到了人类那一边。就是说,永远亭那些人选择了人类哦。” |
私は、兎を除いてね、と付け加えた。あれは人間になりすますには無理がある。 | 我随后又加了一句,除去那些兔子呢。那些实在难以冒充人类。 |
「人間……ですか? あの宇宙人一家が? うーん、私にはどう見ても人間には見えないのですが……」 | “人类……吗?那宇宙人一家子?嗯,虽然不管怎么看我都看不出他们像是人类的样子……” |
「あら見た目の問題ではないわ? あの者達は妖怪のルール下には入らず、人間の社会に入ろうとしているじゃない」 | “啊啦,这不是外表的问题哦?那些家伙并没有遵守妖怪的规则,而是打算融入人类社会,不是吗。” |
薬を売って歩き病人が居れば診察する。それは人間の社会での営為であり、妖怪の社会のそれとは異なる。 | 贩卖药品医治病人。这些都是人类社会的行为,和妖怪社会完全不同。 |
「確かに、我々妖怪とはちょっと馴染めてないですね。里の人間にとっては変わった人間だと捉えられている様ですが……」 | “确实啊,她们和我们妖怪之间的关系并不怎么亲密呢。虽然村子里面的人也将她们当作非常奇怪的人类来看待……” |
「しかし、幻想郷の人間の義務を果たしていない」 | “不过,她们没有尽到幻想乡里的人类的义务。” |
外の世界の人間にもいくつかの義務がある。学ぶ事、働く事、そして社会に参加する事、つまり納税だ。幻想郷ではそれに妖怪との付き合い方の義務もある。 | 外面世界的人类也有一些义务。学习,工作,参与社会,也就是说纳税。在幻想乡之中,还有与妖怪打交道的义务。 |
「人間の義務……ですか。そう言われてみればそんな気もしますね。あの者達は妖怪を恐れないし、それどころか人間の力を強めパワーバランスを崩しかねない。ですがそれと今回の月侵略計画は何の繋がりが……」 | “人类的义务……吗?听您这么一说我也确实感觉到了呢。那些家伙不要说怕妖怪了,而且还加强了人类的力量,很可能打破力量的平衡。但是那和这次的月球侵略计划有什么关系呢……” |
「さっき言ったでしょう? 私は住民税が欲しいと。人間の力を強めるといっても、怪我や病気を治したり、人間の護衛に付く程度ならなんて事もない。それよりは、納税の義務を果たして貰わないと、社会は参加できていない」 | “我刚才不是已经说过了吗?我只是想要收取住民税而已。就算她们加强了人类的力量,给人类疗伤治病,保护人类,如果只是这种程度的话,什么事都没有。比起那些,如果不履行纳税的义务的话,就不能算是参加到社会中了。” |
「……もしかして、月の都に潜入して税金代わりに何か奪ってくるのですか? 彼の者が月の民だから」 | “……难道说,您是打算潜入月之都,拿走里面的什么东西来当做她们的税款吗?因为那些家伙是月之民的缘故。” |
藍は疑問の晴れた様子で私に問うた。私は珍しく自分が言った事が理解して貰えたようで満足した。 | 蓝带着一副恍然大悟的样子向我问道。我对于自己说的话少有地被理解了感到非常满意。 |
「ええ、そういう事ですわ。月の都なんて侵略できる筈もありません。ですが、忍び込む事ぐらいは容易でしょう? 貴方にはその役目を負って貰います」 | “对,正是如此。月之都是不可能被侵略的。不过,要潜入进去不是很容易吗?那么就请你担当起这个重任。” |
——ついに満月の夜が訪れた。 | ——终于到了满月之夜。 |
三日月は剣、半月は弓とも呼ばれていた。では満月は何と呼ばれているか。 | 三日月被称为剑,半月被称为弓。那么这个满月又应该叫作什么呢? |
それは鏡である。 | 那就是镜了。 |
太陽光を反射させる大きな鏡。それと同時に地上の闇を照らす。月の光は闇を照らす為、一見妖怪は苦手なように見える。だが一般に妖怪が月の光の下で力を持つのは何故だろうか。 | 反射太阳光线的巨大圆镜。同样照亮了地面上的黑暗。月光因为照亮了黑暗,给人的第一印象妖怪应该很害怕。但一般来说妖怪在月光下会发挥更大的力量是为什么呢。 |
その理由は光というものは照らすだけではなく、同時に陰も生むからである。 | 其缘由便是光这种东西不仅仅是照亮,同时也会产生出阴影。 |
薄明かりの月光の下では色んな場所に陰が出来る。草木、山、岩、建物、複雑な形状をした地上を月の明かりだけでは照らす事が出来ない。そして出来た陰が人間の恐怖を生み、場合によっては妖怪伝説となった。ある意味、月は妖怪の生みの親とも言える。 | 在淡淡的月光下各种地方都会产生出阴影。草木,山岩,建筑,地形复杂的土地仅仅靠月光不可能完全照亮。而因此产生的阴影让人心产生出恐惧,有时就会变成妖怪传说。从某种意义上说,月亮可以说是妖怪的生母。 |
私は湖に映った満月を見ていた。湖上の満月は空に浮かぶそれよりも何かに浮かんでいるように見えた。そう思ってみると、空の満月はただの絵としか思えなくなってくる。 | 我望着映照在湖中的满月。湖上的满月比起浮在空中的那个看上去更像是浮在什么上面一样。这么一想,空中的满月看起来就好像仅仅是一幅画一般了。 |
水面に座っている私の脇に藍がやってきた。 | 我坐在水面上,蓝来到我的身旁。 |
「日が完全に落ちましたね」 | “太阳已经完全落山了呢。” |
「遅いじゃない、夜が明けるまで来ないのかと思っちゃったわよ」 | “太慢了吧。我还以为你一直到天亮都不会来了呢。” |
「いやいや、まだ宵の口です。夜はこれからですよ」 | “哪里哪里,刚刚天黑而已。夜晚从现在才刚刚开始。” |
湖に映った満月は手の届く幻。遠くに見える月は天蓋に描かれた絵。基本は同じものである。 | 映在湖面的满月是伸手可得的梦幻。遥远可见的月亮是描绘在天盖上的画像。基本是同样的东西。 |
私はその幻と絵の境界を弄る事で月と地上の通路を創り出す。 | 我通过摆弄幻与画的境界,创造出月亮与地上的通道。 |
「紫様。そろそろ、吸血鬼のロケットが月に辿り着いた頃じゃないでしょうか?」 | “紫大人,差不多也该是吸血鬼的火箭抵达月亮之上的时候了吧?” |
「さぞかし月は騒がしいでしょうね。今頃、良い勉強をしてる頃じゃないかしら?」 | “想必现在月亮上面应该正陷入一片骚乱吧。这时候,正好是好好给他们上一课的时候了吧?” |
「結局、あの吸血鬼は囮という理解で良いのでしょうか?」 | “结果,那些吸血鬼是诱饵,这么理解对吧?” |
「ん。まあ……そうね。それは間違いではないわね」 | “嗯。嘛……是呢。这么理解也没有错。” |
「?」 | “?” |
私は傘を閉じ水面に浮かんだ幻の月に傘を刺した。傘を手放しても何故か水の上に立ったままとなり、水の中に消えてしまうような事は無かった。 | 我将手中的洋伞收起向浮在水面的幻月刺去。就算放开手不知为什么伞也依然站立在水上,不会消失到水中去。 |
水面の月はゆがんで、一旦小さくなると今度はすぐに大きくなった。そして最も大きくなったところで傘を中心に月は割れ始めた。 | 水面上的月亮扭曲起来,稍微缩小了一点之后马上又变得更大起来,当变成最大的时候以伞为中心月亮开始裂开了。 |
水面の月の真ん中に幅数センチほどの亀裂が入る。月は水ごと割れ、別の場所への入り口が見え始めていた。亀裂の向こう側から芳しい香りが漂ってくる。 | 水面上的月亮在正中间出现了有数厘米宽的裂纹。月亮连同水一起裂开,开始能看到通往另一个地方的入口。从裂纹的那一边飘来一阵阵芳香。 |
この亀裂の向こう側は吸血鬼達が先に着いているだろう月面である。この亀裂に入るだけで一瞬で月に辿り着くのだ。 | 这个裂纹的对面就是吸血鬼们先一步抵达的月面。只要进入这个裂纹便可以一瞬间抵达月面。 |
吸血鬼達は何ヶ月もかけて見窄らしいロケットを作り、十日以上も狭い空間で惨めな思いをして月に向かった筈である。 | 吸血鬼们花了数月才造出那么一个破旧的火箭,在飞向月球时,还挤在那个狭小的空间中过了十多天的痛苦生活。 |
馬鹿馬鹿しい。月に行く事が目的ならば一瞬である。ここは幻想郷なのだから外の世界の魔法を真似る必要はない。 | 真是愚蠢啊。如果目的只是前往月亮的话,只要一瞬间便可以了。这里是幻想乡,没有必要模仿外面世界的魔法。 |
だが、私は吸血鬼達が私の案に乗ってこない事も予想済みだった。 | 不过,我也早就知道吸血鬼们不会听从我的方案。 |
あの吸血鬼は私が忘れた心を持っている。外の人間も忘れつつある感覚。そして式神に至っては、効率を最優先する為にその感情を良しとしない。 | 那个吸血鬼拥有着已经被我所忘却的一种心境。外面的人类也正逐渐忘却的一种感觉。至于式神,以效率为最优先考虑的他们则视这种感情为障碍。 |
——見窄らしいロケットで、惨めな思いをして旅するから楽しいのだと。最短の方法で楽して手に入れた物にはなんの価値も無いと。苦労を楽しもうとする余裕の心である。 | ——在那个破旧的火箭里面,过着凄惨的日子进行旅行,却感到快乐。对于她们而言,用最直接的方法很轻易便可以得到的东西毫无价值。那是享受辛劳的从容的心。 |
人間も妖怪も長く生きているとその心は失われていく物である。だが吸血鬼達にはその心が強く残っている。だから、私の手を借りて月に行く事を嫌がる事は判っていた。暫く自分達の手で月に行こうとしていたのだから。 | 不管是人类也好还是妖怪也好,一旦活在世上久了就会逐渐丧失那种心境。但是吸血鬼们却将这种感觉很好地保留了下来。所以,我知道她们讨厌借助我之手去月亮。因为她们早就靠自己之手在准备登月了。 |
「いよいよですね。ついに月の民に反撃する時が」 | “终于要开始了,向月之民反击的时刻。” |
「そうね、藍。地上とのお別れに、貴方に月に行ってからする事の命令のヒントをあげるわ」 | “是啊,蓝。在和地面告别之前,我先告诉你登上月球之后要做的事情的命令的提示吧。” |
「え、ヒントですか? 素直に命令していただいた方が有難いのですが」 | “哎,提示?直接下达命令就好了嘛。” |
「命令も、自分で考えた方が楽しめるでしょう?」 | “命令还是自己思考更有趣不是吗?” |
「まあ良いですけど」 | “好吧。” |
「この間、月の公転周期の話をしました。公転周期は予定よりも短くなっています。あれの理由を教えましょう」 | “前一阵子,我们不是说到月球公转周期的话题吗。公转周期比预计的短。我来告诉你原因吧。” |
「それは大変興味深いのですが……それがヒントなのですか?」 | “虽然这个问题我也很感兴趣……这就是提示吗?” |
「月の公転周期が二十八日よりも短い理由は、大昔に仕掛けたねずみ取りなのです」 | “月亮的公转周期比二十八天短,因为那是在古老的过去布下的捕鼠器。” |
「?」 | “?” |
「喩え話11をします。もし、満月を頼りに地上と月を繋ぐ妖怪が居たとしましょう」 | “举个例子给你听。比如说,我们假设有一个能够借助满月连接地上与月球的妖怪存在。” |
「それって紫様の事ですよね?」 | “这就是紫大人你吧?” |
「喩え話です。簡単に通路を繋げられると知った妖怪は、ちょっと月の都に忍び込んで遊んでやろうと考えても不思議じゃありません」 | “这只是举个例子。发现能够轻松打开通道的妖怪,很自然的就会想要偷偷潜入到月之都去玩玩,这么想也不算不可思议。” |
足下の通路は人が入るのに十分な大きさまで広がっていた。私はその月への通路に飛び込んだ。眩しいまでに明るい昼間の光。空には大きな星、何処までも続く水面。そこは月の海だった。 | 脚下的通道逐渐扩大到足以容纳一个人通过。我跳进了通往月亮的通道。明亮到刺眼的白昼之光。空中有巨大的星星,一望无际的水面。那里曾经就是月之海。 |
藍も私に続けて入ってきた。 | 蓝也跟在我的身后走了进去。 |
実はここの所、毎月、ここにやってきていたので藍も特に驚く事は無かった。ここから鴉に式神を憑けて地上の様子を見張っていたのだ。言うまでもなく、月の民の真似事をしてみただけだ。 | 实际上最近,我们每个月都会来这里一次,因此蓝对于眼前的光景也并不感到惊讶。在这里,将式神凭依到乌鸦上,来对地上进行监视。不用说,我们只不过是在模仿月之民而已。 |
「……その妖怪は、天道の通り十五夜に通路を開けて月に忍び込む事にしました。喩え話ですけどね」 | “……而那个妖怪,根据自然规律,在十五夜的时候打开一条通道悄悄地溜进了月亮之上。这只是举个例子。” |
「はあ」 | “哈啊。” |
「月の都に関する情報は少なく、取り敢えず行って見なければ始まらないといった感じでした。さあ、十五夜の日がやってきました。妖怪は意を決して湖に映った満月に飛び込んだのです。そこに見えたのもは12なんと……なんだと思う?」 | “关于月之都的情报非常稀少,总之给人的感觉就是得先亲眼去看看才知道的样子。终于,十五夜到来了。妖怪下定决心跳进映照在湖面上的月亮之中。之后看到的竟然是……是什么你知道吗?” |
「一面の海、ですか?」 | “一片大海,吗?” |
「ご名答、よく判ったわね。月は非常に美しい海で覆われていたのです。で、その妖怪はすぐに理解しました。月から帰る方法も同じように海に映った星から帰れるのだと」 | “答对了,亏你能想的到呢。月亮被非常美丽的海洋所笼罩着。于是,那个妖怪很快便意识到。从月亮回去的方法也是一样的,可以从海上映出的星星返回。” |
私は今通ってきた通路が閉じないよう、再び傘を差し込んだ。そして傘をこれから向かう方向へ折り曲げた。何度と折り曲げ、歪な形にした。 | 我为了不让刚刚通过的通道关闭,再次将伞刺去。然后将伞向我们接下来要去的方向折弯。洋伞来回折了几个弯变成非常扭曲的形状。 |
「紫様、何をやっているのですか? そんなに傘を折り曲げて……」 | “紫大人,您在做什么?这样扭曲洋伞的话……” |
「内緒。お呪いのような物よ。で、さっきの喩え話の続き。帰り道もしっかりと用意した妖怪は安心して月の都を目指しました」 | “保密。这是类似于咒语一样的东西。那么,继续我们刚才所说的那个例子。在确保了回去的道路之后,妖怪终于安心地向月之都进发。” |
「喩え……話ですよね?」 | “举个……例子对吧?” |
「同じ事を何度も言いません。そしてその妖怪は月の都に張られた結界の破り方を探しました。それは思ったよりも複雑で時間のかかるものでした」 | “同样的话我不会再重复几遍了。接着这个妖怪又开始寻找突破月之都结界的办法。这个比想象之中还要花费了更多的时间。” |
私は目的地の方へ移動を始めた。藍も慌てて付いてきた。 | 我开始向目的地移动。蓝急忙跟在我的身后。 |
「やっとの思いで結界を破る鍵を見つけて、月の都に進入しようと思ったのですが、月の民の防御は固く、到底今のままでは敵わないか攻めるのに時間が掛かりすぎると思ったのです。賢い妖怪は一先ず撤退し、次の策を練る事にしました」 | “最后妖怪终于找到了突破结界的办法,就在她即将进入的时候,却发现月之民的防御十分坚固,凭借她现在的能力完全无法与之相抗衡,而且强攻也需要花费很多的时间,于是聪明的妖怪决定暂时撤退再想办法。” |
「……」 | “……” |
「月の民の追っ手を難なくかわし、地上から月にやってきた時に使った通路の所まで戻ってきました。そこで妖怪は衝撃の事実を見る事になるのです」 | “在很轻松地摆脱了月之民的追兵之后,妖怪又回到了从地上来到月亮时所使用的通道的地方。可是在那里妖怪却发现了一件令她感到十分震惊的事实。” |
藍は黙っていた。私の話に夢中なのだろう。 | 蓝沉默着,大概是被我所说的故事吸引住了吧。 |
「そう、通路は少しずつ閉じ始めていました。もう妖怪が入れるような大きさでは無かったのです。妖怪は驚きました『一体何故通路が閉じているのだろう。今夜が十五夜である限り閉じる筈がない』と」 | “是的,那条通道正在逐渐关闭。那个大小已经不再是一个妖怪能够进入的了。妖怪不由得惊讶道‘为什么通道会关闭呢?只要今夜是十五夜的话就不应该关闭才对啊?’。” |
「それで、どうなったのでしょう。あ、いや喩え話でしたよね? どうなるのでしょう?」 | “那么,后来怎么样了。啊,这是个例子对吧?后来会怎么样呢?”13 |
「退路を断たれた妖怪は大人しく降参するしかありません。何せ敵う相手では無いのですから」 | “被切断了退路的妖怪只能够老老实实地投降。毕竟不是对方的对手。” |
「そ、そうですか……。えーと、なんでそんな喩え話を聞く羽目になったんでしたっけ?」 | “是、是这样吗……不过,究竟是谈到什么才让您开始举这个例子来着?” |
「何言ってるのよ、月の公転周期が何故二十八日では無く、二十七日と三分の一日なのか? の話でしょ?」 | “你在说什么啊,我在告诉你为什么月亮的公转周期不是二十八天而是二十七又三分之一天,不是吗?” |
「あ、そうでしたね」 | “啊,确实呢。” |
「そこまで話せば判るよね? 昔は十五夜は完全な満月であった。しかし何者かの手、恐らくは月の賢者の手によって自転周期を狂わされ、それによって公転周期は早められ、気が付かないうちに十五夜は満月とは限らない夜になってしまった。予想よりも早く満月が閉じてしまう様になった」 | “说到这里你明白了吗?以前十五夜是完全的满月。但是因为某个人,恐怕这个人就是月之贤者吧,让月亮的自转周期改变,于是导致公转周期变快。于是在不知不觉中十五夜便不再是满月之夜,于是满月便比预计的时间更早结束。” |
「つまり、満月を頼りに月に忍び込む妖怪を月に閉じ込める為に、月の賢者が仕掛けた罠、と言う事でしょうか?」 | “也就是说,这是月之贤者为了将依靠满月潜入月球的妖怪关在月球上而设下的陷阱,是吗?” |
「そう、もう遥か昔に罠を仕込まれていたというお話。憎き賢者に」 | “是的。很久以前被设下圈套的故事。被可恶的贤者。” |
それからだった、一ヶ月を一律に三十日にする訳にいかず、地上の暦は混乱した。月の民は地上の暦などどうでもよく、ただ十五夜と満月を完全に一致させない為だけに月の公転を狂わせたのだ。月の民にとって地上とは、見下す為だけの場所でしかない。そこでの生活の利便性など、一切考える気もしなかったのだろう。 | 从那以后,一个月就无法再一律定为三十天,地上的历法混乱了。月之民对于地上的历法变成什么样子毫不关心,只是为了不让十五夜与满月的时间一致而混乱了月球的公转。对于月之民来说,地面不过是他们俯瞰的场所而已。在那里的生活的便利性等等,他们根本没有考虑过。 |
月の海は静かであった。波の音だけが控えめに聞こえてくる。その波の音は母なる海の音ではない。水分子がぶつかり合う音だ。月の海では何も生命は育まれていないのだから。 | 月之海一片宁静。只能够听到波涛的声音。那海浪的声音并不是如母亲般的大海的声音。只是水分子互相撞击的声音。因为月之海并不会孕育任何的生命。 |
「喩え話でしたが、参考になりました。ですが……そのヒントから考察するに」 | “虽然只是个例子,不过确实很能作为参考。但是……从那个提示来考虑的话。” |
「何かしら?」 | “怎么了?” |
藍は答え難そうにしていた。色々と言葉を選んでいるようだった。計算能力は高くても、文章処理能力はまだまだなのかも知れない。 | 蓝露出一脸难以回答的表情。仿佛在仔细挑选要说出口的话语。虽然她的计算能力非常高,但是对于文字的处理能力似乎还差得很远呢。 |
「今……私達はその月の賢者が仕掛けたという罠にまんまと嵌っている事になりませんか? 月の都に辿り着くのに時間がかかれば、戻ってきた頃には満月では無くなっていると思います。そうしたらやはり帰れなくなってしまう。実際、月の都の結界を破るのに時間が掛かるんですよね?」 | “现在……我们不就正在月之贤者所设下的圈套之中吗?如果要到达月之都需要花费很长时间的话,等我们回来的时候我想已经不再是满月之夜了啊。那样一来的话当然就回不去了吧。实际上,要破坏月之都的结界是需要花费很长时间的对吧?” |
「あらいやだ、気が付かなかったわ」 | “哎呀真讨厌,我竟然一点也没有察觉到。” |
「いやお願いですから巫山戯ないでくださいよ。今は敵地にいるのです、ちょっとした判断ミスが致命的な事に繋がらないとも限りません。勿論、何か策があっての事だと思いますが……」 | “拜托不要开这种玩笑啊。现在我们可是身处敌人的领地,稍有判断失误都会引起致命的后果。当然,我想您应该有对策的吧……” |
「そうねぇ、もし帰り道が無くなって月に閉じ込められたら、吸血鬼のロケットにでも相乗りをお願いしましょうか? もうそろそろ、月に着いている筈ですから。それとも私達の方が早く着いちゃったかな?」 | “当然了,一旦回去的通道关闭的话,我们就去请求搭乘吸血鬼的火箭返回吧?她们现在也应该已经抵达月亮上面了吧。还是说我们能比她们更快抵达呢?” |
「もー、何処まで本気なのか判断に苦しみます。吸血鬼のロケットなんて、今頃海に打ち付けられて大破しちゃったりしてるかも知れないじゃないですか。紫様は見てないかも知れませんが、驚くほどにオンボロだったんですから」 | “真是的,您究竟哪些话是认真的真让人没法判断啊。吸血鬼的火箭现在说不定撞到海上严重损坏了呢。紫大人也许没看见,那火箭破得惊人。” |
藍は怒っている振りを見せた。何だかんだ言って、私の命令通りにしか動く事は出来ないのだから、私を絶対的に信用するしかない。 | 蓝摆出一副发火的样子。不过就算再怎么说,她也只能按照我的命令去行事,所以只有绝对地相信我。 |
「へぇ、そんなに言うほどオンボロだったのなら、もしかしたら月に行く前に燃え尽きてるかも知れないわね。何か仕掛けでも無い限り……」 | “哎,要是真像你说的那么破烂的话,也许在抵达月亮之前就已经燃烧殆尽了呢。假如没被人动过什么手脚的话……” |
私と藍が辿り着いた月は、いつも陽気な妖怪と人間達の喧騒が絶えない幻想郷では考えられないくらい静かであった。 | 我和蓝所抵达的月亮,有着在总是充满了热闹的妖怪和人类们喧闹不断的幻想乡中无法想象的宁静。 |
人間は都会の華やかさを求め、いつの間にか地上から静けさは失われていた様だ。辺境の幻想郷ですら騒がしい位だから外の世界は言うまでもない。 | 人类追求着都市的繁华,不知不觉间让地上已经失去了宁静。就连位于边远之地的幻想乡都是如此喧嚣,外面的世界就更不必说了。 |
だがしかし、月の都の方が文明は進んでいる筈である。月の裏側に存在する月の都はさぞかし騒がしいに違いない。もし落ち着いた繁栄を築いているのであれば、それは衰退の証か、それとも地上とは比べものにならない高貴な文明だと言えるだろう。 | 不过,月之都的文明应该是非常先进的。所以位于月亮背面的月之都一定是一个非常繁华热闹的地方吧。假如能够构建起安静的繁荣的话,要么那就是衰退的证明,要么那就是地上所无法比拟的高贵文明吧。 |
衰退か極楽浄土か。どちらにしても私は嫌である。私には都会の喧騒が必要なのだ。 | 衰退也好极乐净土也好。不管哪个我都不喜欢。对于我来说都市的喧闹是必不可少的。 |
そう思うと、この静かな月の何処かで吸血鬼達が騒いでいると思うと何だか懐かしく思えた。 | 这样想着,想到在这宁静的月亮上的某处,吸血鬼们正在引发骚乱,我不禁有点怀念起来。 |
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注解