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东方香霖堂/第17话/中日对照

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< 第16话   东方香霖堂   第18话 >

雪明りを頼りに日記をつけ、冬の夜をやり過ごす。
借着白雪反射的月光,霖之助正在写着日记,他也在用这种方式度过着冬日的夜晚。
そんな香霖堂を訪れたのは、紅魔館に仕えるメイド·十六夜咲夜だった。
而此时到访香霖堂的,是在红魔馆工作的女仆——十六夜咲夜。
彼女の注文は、非の打ち所のない縁起物。
她想要的东西,是一件挑不出任何不是的祥瑞之物。
なんでも月世界へ至る「魔法」の成就には、途方もない運が必要だというのだが——。
还说什么若要成就前往月球世界的“魔法”,就必须得有远在星辰之外的好运气。
ウェブ揭載も本格スタートした東方シリーズ。
东方系列正式开始网络连载。
今宵、不吉と吉兆をめぐる人間界の常識がいとも簡単に覆される……!
今夜,有关不吉与吉兆的人间界的常识将被极其简单地颠覆……!
月と河童
月亮和河童
  窓の雪は月の狂気をかき集め、闇の黒は筆を通して紙にしみ込んでいく。
  窗边,白雪聚集着月球的狂气,而屋中,阴暗中的黑色正通过笔尖缓缓地渗入到纸张中去。
  昼は本を読み、夜になるとその日の出来事を本に書いた。不思議なことに日記を書き始めてから、些細な出来事でも気が付くようになったのである。日記を書くという行為の本当の意味は、日々の出来事を忘れないためでも過去を見つめ直すためでもなく、些細な変化でも見落とさないように感度を高めるためだということに気が付いた。
  我白天读书,到了晚上就把这一天所发生的事情记录成册。令人不可思议的是,自我开始写日记以来,哪怕是非常琐碎的一些事情我都会开始关注起来。说起写日记,其真正的意义并不在于使人们不会忘记每一天发生的事情,也不在于可以重新审视过去,我开始觉得,它其实提高了人们对事物的感知度,从而让我们不会错过哪怕是微小到一丝一毫的变化。
  人は普段からもの凄い量の情報を受けながら生きている。そして興味のあるもの以外の情報はそのまま流され、興味のあるものだけが自分のアンテナに引っ掛かり自分に蓄積されていく。日記はその感度の偏り具合を極限まで増幅する、いわば真空管アンプのような効果を発揮する。日記を書き始めたことで極限まで感度が高まった状態の僕は、どのような些細なことでも見逃さないだろう。
  人们平时生活的过程中会得到不计其数的信息,其中,自认为不感兴趣的,了解到后,也就忘掉了,只有那些自己感兴趣的消息才会被自己的信息天线所接收,并成为自身的积蓄。日记就可以让这种感知度指针的偏转增幅到极限,比喻起来,就好像是起到了电子管增流器的效果一样。因为开始写日记,我的感知度已被提高到了极限,这样一来,多么微小的事情都不会逃过我的眼睛了吧。
  ーーカランカランカラン
  ——叮当叮当叮当
  店の入り口で音がした。
  小店的入口处传来了响声。
「こんな夜遅くにやって来るなんて……一体誰だい?」
“这么晚了竟然还会有人来……究竟会是谁呀?”
  僕は窓の雪に集められた月明かりを頼りに、入り口の方へ向かった。もう店を閉めてから随分と経っていたため、店の中は冷え切っていた。
  我借着窗边的白雪聚集起的月光向入口的方向走去。现在已经关张很久了,店里已是寒冷彻骨。
「開いているかしら?」そこに居たのは吸血鬼に仕えるメイドだった。
“您还在营业吗?”站在那里的是侍奉吸血鬼的女仆。
  夜中に訪れたからといって別段急ぎの様子には見えない。どうやら、彼女は活動時間の大半が夜に偏っているのだろう。夜に出掛けるのが当たり前のような顔をしていた。御主人様が吸血鬼なのだから仕方がない。
  虽然大晚上的到我的店里来,不过看起来她也不是很急的样子,也许她活动的时间多半都是在夜间吧,看她的表情就好像是夜里出门对她来讲已经是习以为常了。再说她的主人是吸血鬼,这也是没有办法的。
「何を言っているんだい。灯りを消したし、どう見たって閉まっているようにしておいたつもりだったけど」
“这还用问吗。店里已经一点儿亮光都没有了,我觉得怎么看都能看出来是停止营业了吧。”
「それは節約しているか留守にしているか、どちらかかと思いました」
“我还以为您是在节约或是出门了呢。”
  留守で灯りを消していた場合も、勝手に上がって物色するつもりだったのだろうか。そう考えるとおちおち家も空けられない。
  如果是我出门了所以没有点灯的话,她也会随随便便地进屋来翻东西吧?一想到这一点我是说什么也不能没事儿就出门了。
縁起の良いものを探しに来たのですけど……何か置いてないかしら?」
“我是来找一件比较吉利的物品的……您这里有吗?”
  僕は店の灯りを点けた。それと同時に周囲から月の狂気が消え去り、途端に店内は夜の薄暗さを取り戻した。閉店後に訪れるなんて随分と自分勝手だと思ったが、お客であるのならば別にいつでも構わない。うちの店の客には、とんでもなく早朝に訪れるものだっている。
  我在店里点起了灯,同时,月光所带进来的狂气也随之从身边消逝,店里立刻恢复了往常夜间的昏暗。竟然会在我关门以后才来,也太不会挑时间了,不过既然是客人,倒是什么时候来也都没什么关系。来我店里的客人还有一大清早就过来的呢。
「縁起の良い……って、漠然とした注文ですね。今なら入荷したての『鳥居が刻まれた隕鉄』とかありますが……」
“比较吉利的……还真是含糊的要求呀。现在我这儿倒是有新进的‘刻有鸟居的陨铁’……”
「そんな信憑性に欠けるものじゃなくて、もっと見ただけで縁起の良いってわかるものはないかしら?」
“不要那些没什么可信性的东西,有没有一看就能知道比较吉利的东西呢?”
  僕は、こんな夜中に、何のために縁起物を使うのか想像できなかったが、売れるものなら今の内に売っておきたかった。普段、縁起物など実用性の乏しい品物はなかなか興味を持って貰えないのである。僕は「それならとっておきの縁起物があるよ」と告げて、倉庫の奥で眠っていた、もっとも大きくて縁起の良い品を持ってきた。
  我是想不出她这么大晚上的非要个吉利的东西来干什么用,不过既然有买卖上门了我也想趁现在卖点儿东西,毕竟平时基本没有什么人会对能带来吉利的这类缺乏实用性的东西产生什么兴趣。“那么我这里可有一样上好的祥瑞之物哟”,说完,我把已在仓库的深处沉睡了很久的一样大型的吉祥之物请了出来。
「あら、なんてカラフルな亀の甲羅かしら。これは確かに縁起が良さそうじゃない」
“哎呀,五颜六色的,好漂亮的龟甲呀。这还真是很吉利的样子呢。”
「赤と青、白と黒、そして中央は黄色の五色の甲羅。これほど縁起の良いものはなかなか見あたらないと思うよ」
“红和青,白与黑,然后正中间呈黄色的五色的甲壳,我看比这还吉利的东西是很难再找见了哟。”
「でも……この甲羅、亀にしては不自然ね。大きすぎるし、それに何だかのっぺりとしているというか」
“不过……这个甲壳,要说它是龟类的话也太不自然了呀,这么大,而且好像太平了点儿吧。”
「そう、これは亀の甲羅じゃない、『河童の五色甲羅(ごしきこうら)』さ」
“不错,这不是龟的甲壳,它是‘河童的五色甲壳’。”
  外の世界で作られたストーブが、冷め切った店を暖めるまでには少し時間がかかる。ようやく店内が暖まり始めた頃に、頭の回りも良くなってきた。
  想要用外面世界造出的暖炉让冷彻的店里暖和起来是需要一些时间的。当店里终于开始暖和起来的时候,我的脑筋也转得比较灵活了。
「河童、ねぇ。河童なんてどこに棲んでいるのかしら?」
“是河童呀。河童这种东西生活在哪儿呢?”
「河童なんて山にいくらでも棲んでいるよ。君たちはあまり山に足を踏み入れないだろうけど、山にはさまざまな妖怪が棲んでいるよ。ただこの甲羅は最近の代物ではない。千年以上……恐らくは千三百年位前のものかな。とにかくもの凄く古いものだ」
“河童在山里有很多呢。也许你们不怎么往山里去,山里面可住着各种各样的妖怪哟。不过这个甲壳可不是最近的东西了,千年……它应该是一千三百多年前的东西了。反正是非常非常古老的啦。”
「そこそこ古いわね」
“听上去还真挺古老呢。”
「後で文句を付けられても困るから予め注意しておくけど、河童と伝えられているだけで、本当に河童の甲羅なのかは定かではない。それでも五色の甲羅は最大級の吉兆の品さ」
“我怕你以后来找我理论所以我得预先声明一下,这只是传说是河童,是不是真的是河童的甲壳我也不好说。不过这五色的甲壳可是能带来吉兆的最高级别的东西了。”
  河童といわれることの信憑性を正直に述べた。すると、メイドの表情が少し訝しむ目付きに変わったような気がしたので、慌てて話題を逸らした。
  我诚实地说明了这甲壳出自河童之身的可信性。我感觉女仆在听了之后表情中流露出了些许怀疑的眼神,所以连忙转移了话题。
「ところで、なんで縁起の良いものが欲しいのかい? しかもこんな夜遅くに」
“说起来,为什么你会要吉利的东西呢?而且还是在这大晚上的。”
「それは……大きな魔法の成功には、大きな運が必要らしいのです」
“那是因为……说是为了成就一项大的魔法,就必须要有很高级别的幸运才行。”
  彼女が語り出したのは、とても奇怪な話だった。先日、彼女ーー十六夜咲夜が働く紅魔館で節分が行われたという。吸血鬼が鬼を追い払うという変わった行事だが、紅魔館はそのような不思議な行事を頻繁に行っているらしく、あまり珍しくもない。
  接下来她所说出的是一件非常奇怪的事情。说是前几天在她——十六夜咲夜所工作的红魔馆里举办了立春前的撒豆子活动,也就是一场由吸血鬼来把鬼赶出门的奇异活动,不过好像红魔馆里常会频繁地举办些不可思议的活动所以这也就不怎么新鲜了。
「ーーその節分大会が終わろうとした頃、月に異変が起きたのよ。貴方は知らないだろうけど」
“——这场撒豆子的活动刚要结束的时候,月亮发生了异变,不过你可能不知道这事儿吧。”
  後日、『文々。新聞』で知ったのだが、節分の日の夜に月が割れるという惨事が起きていたらしい。月は音もなく割れ、音もなく元通りになったとのことだったが、時間が時間ということもあって気が付いたものは少なかった。
  事后我在《文文。新闻》报上才知道这事儿,好像是说春分前夜,发生了月亮破碎的灾难性事件。据说月亮无声无息地破碎,而后又无声无息地还原了,因为事发的时间肯定是在夜里所以注意到的人也很少。
「それで、その月の異変と縁起の良いものとどういう関係が……」
“那么,这月亮的异变和吉利的东西之间又有怎样的关联啊……”
「砕け散った月を見て驚いたお嬢様が、また言い出したのです。『今度こそ月に行くわよ』って」
“大小姐见到月亮的碎片落下的情景吃了一惊,然后又说出‘这次一定要去月球’这话来了。”
  今度こそというのは、前にも突発的に月に行くと言い出して、月に行く魔法(『プロジェクトアポロ』という名前の魔法らしい)を行おうとしたことがあったからだ。その時は材料不足で失敗に終わったそうだが……。
  之所以她说“这次”一定,是因为之前已经有过一次大小姐突然说想要去月球,然后大家还要一起实施登月魔法(据说是叫做“阿波罗计划”的魔法)这样的事儿了。不过那次因为时间和材料不足而失败了……
  『プロジェクトアポロ』は、外の世界の魔法の中でも非常に難解で複雑なものだという。魔法の手順が書かれた魔導書は何冊にも及び、手順、材料、道具共に最大級の魔法だそうだ。さらに材料や道具には理解不能の品が大量にあり、それ一つ一つを探し集めるだけでも一苦労なのだ。それ故に、これを実行できるだけの魔法使いは、幻想郷には存在しないと思われている。
  传说“阿波罗计划”在外面的世界来看都属于那种非常复杂且难以理解的魔法。听说光是写施法步骤的魔导书就有好几本,无论从步骤、材料或工具上看都是最高级别的魔法。更甚的是材料和工具中极大多数都是难以被人理解的东西,光是想要一个个地把这些东西凑齐就得费尽一番周折。因此,人们都认为幻想乡里不会有能够实施如此高级别魔法的魔法使存在。
「お嬢様のお友達の魔法使いは、『材料はかなり集まったけど、この最大級の魔法が成功するには最大級の運が必要』だと言うんです。それで『幻想郷で最も縁起の良いものを持ってきて』と命じられたもので……」
“大小姐的一个魔法使朋友说,‘材料搜集得已经差不多了,不过要成就这个最高级别的魔法必须要有最高级别的幸运才行’,然后大小姐就命令我说:‘去把幻想乡里最最吉利的东西拿来’了……”
「なんとも災難でしたね」
“对你来讲还真是遭罪呢。”
  魔法の実行は六つの要素から成り立っている。それは、術者の『技量』、魂の性質である『気質』、道具や材料といった『物質』、行う場所である『空間』、実行した時の『時間』、そして最後に『運』である。このうち、最後の運が占めるウエイトは最も重く、運さえあれば他の要素はある程度カバーできるし、逆にこれがなければどんな簡単な魔法でも失敗するのだ。
  实施魔法需要六大要素来支持,它们是施法者的“技艺”、表现灵魂性质的“气质”、工具和材料等的“物质”、施法的场所即“空间”、施法所需用的“时间”,然后最后就是“幸运”了。其中,最后的幸运所占的比重最重,只要有好运,其它的要素在一定程度上都能得到弥补,反言之若没有幸运的话再怎么简单的魔法都是会失败的。
「運以外の要素はほぼ揃ったらしいので、後は運だけなのです。最も縁起の良いものとなると、茶柱でも四つ葉のクローバーでも竹の花でもなくて、もっともっと珍しいものじゃないと……」
“幸运以外的要素似乎基本上都集齐了,现在就差幸运一样了。不要粗茶水中可以竖直漂浮的茶叶茎呀四叶的三叶草呀或者竹子花之类的东西,必须得是比这些更要、更要少见一点儿的东西……”
  珍しいものと縁起の良いものは異なる気がするが、恐らく紅魔館ではその常識がまかり通っているのだろう。珍しければ良いのなら、この河童の五色甲羅ではなく、つちのこ酒あたりでも良かったのかもしれない。
  我觉得好像少见的东西和吉利的东西性质不一样吧。恐怕在红魔馆里这一点已经是常识了吧。要是越少见就越好的话,干脆不要这河童的五色甲壳,要点儿用槌之子1泡的酒之类的东西也许就行了。
  しかし、僕はこの河童の五色甲羅を売る絶好のチャンスが到来していると、直感でわかっていた。このチャンスをみすみす逃してはいけない。
  不过我的直觉告诉我,现在能卖掉这河童的五色甲壳的绝好的时机来了。绝对不能白白地让这个机会溜掉。
「この五色の甲羅は、ただ珍しいだけじゃない。まさに、今の君にぴったりの品ですよ」
“这五色的甲壳绝不仅仅只是少见,它可正是你现在所需要的东西哟。”
  縁起が良いものには縁起が良いという謂われが必要である。僕はその河童の五色甲羅が何故縁起が良いのか、そして何故彼女にぴったりな品なのかを語ることにした。
  要说这东西吉利就必须得有个它为什么吉利的说法。我决定跟她侃侃为什么这河童的五色甲壳它吉利,还有为什么它正好适合她。
  立ち話を止め、僕はストーブの近くの椅子に腰掛けた。彼女にも椅子に座るよう勧めたが、「立っているのには慣れてますから」と言って姿勢の良い立ちポーズを崩そうとはしなかった。僕だけが座った状態で、彼女が手に持っている甲羅を指さして説明を始めた。
  毕竟不能总是站着说话,我在暖炉附近弄来把椅子坐下。当然我也要她找个椅子坐,不过她说她习惯站着了,然后依旧保持着她那良好的站姿。我一个人坐在椅子上,手指着她手中拿着的甲壳开始解说起来。
「赤、青、白、黒、黄の五色は、この自然のありとあらゆるものを表しているんだ。東西南北と中心という方角、春夏秋冬と節分の季節、そして火水木金土の物質、つまりこの世の全てを表している色なんだ。魔法の実行に必要な『空間』『時間』『物質』を網羅していることになる。さらに亀は大地を運ぶ動物として元々縁起が良く、自然をすべて乗せる五色の亀は最高級の縁起物とされたんだよ。よく言われる一万年もの長い間生きる亀とは、もちろん普通の亀ではなくこういう五色の亀のことを言っている」
“红、青、白、黑、黄这五个眼色,正代表了这个自然界中所有的事物。东西南北与中心这五个方向、春夏秋冬和土用2这五个时节,还有金木水火土这五种物质,也就是说,它们是代表了这个世界里的所有事物的颜色,网罗了施展魔法时所必要的‘空间’‘时间’以及‘物质’。而且龟作为运动于大地之上的动物原本就相当地吉利,而将自然界中的一切都驮在身上的五色龟就更被人们认为是最高级的祥瑞之物了。人们经常说龟能长生一万年,那所指的当然不会是普通的乌龟而正是这种五色龟。”
「でも、この甲羅は亀じゃなくて河童なのでしょう? 河童でも一万年生きるのかしら」
“可是,不是说这甲壳不是龟类的而是河童的么?河童也能活上一万年么?”
「そこが、この品が今の君にピッタリの品という理由なのさ。河童は、よく中国の河伯(カハク)と呼ばれる河の妖怪が転じたものだといわれているが……それは違うんだ」
“这就是为什么这样东西对现在的你来说正合适的原因了。人们经常说河童是从中国的一种叫河伯的、生活在河里的妖怪转变过来的……但这个说法是错误的。”
「今のお話自体、初めて聞いたのですけど」
“这事儿我倒还是第一次听说。”
「河伯は大河に住む水の神様だ。河伯と河童を一緒にすることは、少し河童を持ち上げ過ぎだと思わないといけないよ」
“河伯是住在大河里的水神。把河伯和河童相提并论,这得说是把河童的地位抬得太高了点儿。”
「確かに、河童なんて天狗よりもたちの悪い妖怪ですからね」
“确实,像河童这种东西其实是比天狗还不济的妖怪呢。”
  外の国に同じような呼び名の妖怪がいるというだけで、同じ生きものというのは無理がある。それに言葉だって、河に棲み河の字が付くんだから同じような呼び名になって当然なのだ。
  这只不过是在外国也有一种名字差不多的妖怪而已,要说它们是同一种生物还是有些欠妥。另外从语言上来讲,因为它们都生活在河里,所以名字里都有个“河”字这也是当然的。
「僕は、河童がもっと身近な生きものが変化したものだと考えているよ」
“我觉得河童是从另一种离我们更近的动物转变而来的。”
  ストーブに載せていたヤカンの水が音を立て始めた。冷え切っていた店内は再び活気を取り戻し、お茶を煎れると漸く調子が出てきた。
  放在暖炉上的水壶里的水已经开始咝咝作响了。原本冷彻的店里再次恢复了生气,沏了壶茶之后感觉也渐渐回来了。
  こういう時、メイドは習慣でお茶を煎れてくれたりしないのかと思ったが、彼女は他人の家ではそういうことをしないらしい。それは彼女が良くできたメイドという証拠である。良かれと思って他人の家でもお茶を用意したり後片付けをしたりするものも居るが、それは無神経なだけだ。誰かの家にお邪魔した時はたとえメイドであれ、常に客人である。だから手伝いを買って出たりされても、家の主人は迷惑する。本人は善意であるからなおさらたちが悪い。
  我以为这种时候女仆会习惯性地来把茶沏好,但看来她在外人的家里是不会这么去做的,这就证明了她是一个训练有素的女仆。倒是也有人会出于善意来帮别人家的人沏茶呀或是收拾杯子碟子的,不过这么做只能说明她不懂礼数。只要是到别人的家里去做客,哪怕是女仆这时也是客人的身份,所以如果主动出手帮忙的话就会让这家的主人过意不去。而其本人又是出于善意的,那么这样做的性质就会更恶劣。
  メイドはありとあらゆる所にまで神経を使い、常に失礼のないようにすることに長けているものだ。店に来て勝手にお茶を煎れて飲んでいる誰かさんとは大違いである。僕は彼女の分のお茶も用意した。
  在任何场合下都得时刻注意不要做出失礼的事情,这就是女仆们要优于常人的地方,比起进来之后就自己随随便便沏茶喝的某某人来那可是大不一样。我也给她倒上了一杯茶。
「では、河童はどこから来たというのです?」
“那么,您说河童是从哪里来的呢?”
「その答えは河童の姿を思い浮かべればすぐに想像付くよ」
“这个问题的答案,你只要想象一下河童的样子就能立刻想到了。”
「河童の姿ねぇ……。そういえば河童の甲羅ってつるつるとしているかしら?」
“河童的样子啊……说起来河童的甲壳是又平又滑的吗?”
  そう、河童の甲羅は亀とは異なる形状をしているのだ。
  不错,河童的甲壳与龟的甲壳形状是不一样的。
「河童の由来は、カハカメが転じたものだと考えている」
“我想河童是由‘Kahakame’转变过来的。”
  それにしてもこのメイドは、夜中に訪れて来た割には急いでいるように見えない。もしかしたら月に行くことなんて最初から無理だと思っているのかも知れない。そう考えると、彼女はお嬢様の遊びに付き合っているようにも見えた。
  说来这个女仆,大半夜的到我这儿来,看上去却并不着急,也许是她一开始就认定了去月球这事儿根本就是不可能的吧。这么想的话,那她现在就好像是在陪她的大小姐玩游戏一样了。
「カハカメ、つまり河に棲む亀。カハカメは漢字で書くと大亀という字になるんだよ。その字が表しているようにもの凄く巨大な亀なんだ。成長すれば人間くらいの大きさになることも珍しくない。そのカハカメが何年もの長い間生き続け、人語を理解するようになったり人の形を取れる程の妖力を得たものが河童なんだ」
“‘Kahakame’,也就是生活在河里的龟,‘Kahakame’写成汉字的话就是‘大龟’两个字了。而大龟也正如这两个字所表示的一样,是一种非常巨大的龟,真要是长起来,长到一个人类那么大也不新鲜。这大龟通过长年的寿命,具有了能理解人的语言或是能变化成人的外形的妖力,这样就变成河童了。”
「カハカメ……って聞いたことがないわ。それに河にそんな大きな亀が居るのかしら? 海亀じゃあるまいし……」
“大龟……我还从没听说过呢。而且,河里会有那么大的龟吗?又不是海龟……”
  まるで海亀が泳いでいるのを見たことがあるかのような口ぶりが少々気になったが、僕は続けた。
  听她的口气就好像是亲眼见过海龟在水里游一样,这让我稍微有点在意,不过我还是继续说道:
「よく思い出してごらん? 居るじゃないか、海じゃなくて河や沼にも非常に大きくなるモノが。もう一度河童の姿を思い浮かべてみたり、その甲羅をよく見てごらん? 亀にしては丸くて滑らかだと思わないかい?」
“再好好回忆回忆,不是有么?不是在海里,而是在河流或者沼泽里,那种会长得非常大的东西。你再想象一下河童的样子,然后再好好看看那个甲壳,不觉得如果是龟类的话它太圆太光滑了点儿吗?”
「なるほど、貴方の言いたいことはよくわかりましたわ。だから、この品が今の私にぴったりだと言ったのね。でも、そうだとすると……お嬢様には『私が水棲生物に疎い』ということにして頂かないといけません」
“原来如此,我明白您想说的了。所以您才说这样东西现在是最适合我的是吗。不过这样一来……我就必须得向大小姐说明我不太了解水生动物才行。”
  メイドは納得した様子で五色の甲羅を抱えて帰って行った。勿論、お金を払い、お茶の後片付けもせずにである。本当に良くできたメイドだ。僕は二人分の後片付けをし、再び閉店にした。
  女仆好像一切都明白了,然后就抱着那五色的甲壳回去了,当然她付了钱,也没有收拾喝茶的杯子,真的是个训练有素的女仆呀。我收拾好了两个人的茶杯,再次停止了营业。
  それにしても、彼女が最後に言った言葉……彼女はメイドとしての心得をわきまえた上に、頭の回転も速いことがよくわかった。
  我又想起了她走时最后的那句话……她不但把握住了作好一个女仆的心得,而且头脑的运转也相当地迅速。
  彼女は河童の正体に気付くと、すぐに御主人様に見せた時の説明を頭の中でシミュレートしたに違いない。なんで縁起が良いのかを説明するにあたって、その甲羅の謂われを述べるだろう。でも、河童の正体は伝えないんじゃないかと予想する。
  她一定在注意到河童真正原形的时候,脑子里就已经拟好了把那甲壳拿给主人看时的说辞。在解释那甲壳为什么吉利的时候,她肯定也要提到我的这套说法吧。不过我想她应该不会告诉主人河童的原形。
  河童の正体である 大亀(カハカメ)、それは海ではなく河や沼に棲み、そしてとんでもなく大きくなる亀。すなわち、鼈(スッポン)である。その鼈が長い間生き続け、妖力を得たものが河童である。
  河童的原形——大龟,是一种并非在海里,而是在河流或沼泽里生活的、可能会长得非常之大的龟,也就是王八了。王八生活了很长时间,具有了妖力之后就成了河童。
  御主人様が月に行こうとする時に鼈を持って行くことは、それだけで何か裏の意図、しかも負の方向の意図があると思われかねない。だから彼女は自分が水棲生物に疎いことにし、その甲羅が鼈のものであることを御主人様には伝えないのだろう。
  在主人想要去月球的时候却给她拿来一个王八,就光这一点就很可能被认为有什么不良的、负面的企图。所以她就说自己不太了解水生动物,从而就不会把那甲壳就是王八的事儿告诉给她的主人吧。
  月と鼈。確かに二つのものは似ているが大きくかけ離れている。だがしかし、我々が触れられるものも、良い縁起をもたらすものも鼈の方なのだ。月は不吉なものであり、決して触れることもできない。だとすると、月と鼈のどちらが優れているかといえば……言うまでもなく鼈の方である。遠くの不吉を見る前に、身近な吉兆を見た方が良い。
  月亮和王八,确实这两样东西外形相似但却差之千里3。但是我们平时就能接触到的,又能够带来吉利的东西就是王八了。月球是不吉利的东西,而且也绝不是伸手就能够碰到的。这样一来呢,要说月亮和王八哪一个地位更加优越一点儿……那肯定不用说是王八。在去看离自己很远的不吉利之前,还是先看看自己身边儿的吉利好。
  彼女はそこまで気付き、月に行くために鼈を用意するという一見侮辱かと思われる行為をわざとしたに違いない。多分、お嬢様には気付かれないだろうが、紅魔館に居る識者の誰かが気付けば彼女は満足なのだろう。
  她一定也想到了这些,并故意为去月球准备了一只一眼看上去会让人不禁产生侮辱之意的王八。虽然也许大小姐不会注意到这一点,但只要住在红魔馆里的那个知识分子注意到的话她也就满足了吧。
  僕はというと、思わぬ臨時収入により少々高揚した気持ちでいた。あの五色の甲羅は大きいし誰も興味を持たないし、どちらかというと不良在庫だったのだ。それに河童の甲羅と言われてはいるが、それも疑わしいときたものだ。メイドが訪れた時、これが売れるチャンスはもう来ないかもしれないと思い、僕は極限まで高まった感度で甲羅と彼女を見た。
  说到我呢,我正为这不期而至的临时收入而有点儿激动兴奋呢。那个五色的甲壳体积又大还没有人对它感兴趣,准确地说就是个积压品。而且虽然传说它是河童的甲壳,不过这一点我也怀疑得很。女仆来的时候,我就想,像这样能把它卖掉的好机会可能再也不会有了。我用我被提高到了极限的感知度将甲壳和她联系到了一起。
  月に行くという途方もない目的とメイドらしい気の使い方を見た時に、突然、河童と鼈、月と鼈の関係が閃いたのだ。たとえ縁起が良いからといって、まったく無関係の品では意味がない。だから僕は遠回しにそれを話した。もちろん、彼女ならきっとすぐに理解し、そしてこの商品を手に取るだろう、という計算の上で……。
  当我想起想要去月球这种根本不现实的想法和她作为女仆的周到的考虑时,突然,河童和王八、月亮和王八的关系在我的脑中闪过。就算是再吉利的东西,如果两者根本没有关系的话也没有意义。所以我才绕着弯子说了那些话。当然,我想如果是她的话,肯定能够立刻理解我的意思,并且买走那件商品吧。这也是我所算计到的……
  僕は筆を置き窓の外を見た。その時、一瞬だけ月が紅く光って見えた気がした。
  我停下手里的笔向窗外望去。这时,我似乎瞬间看到月亮发出了红色的光芒。
次回予告
下回预告
暖かな陽射し、雪解け水のせせらぎ、木立の芽吹き。
温暖的阳光,雪融化的水的浅溪细流,树丛的抽芽。
生けとし生きるものに祝福を告げる声音につつまれ、夢うつつの霖之助。
被向万物传达祝福的声音所包围,半梦半醒的霖之助。
暁を覚えぬ春眠の中、彼の元を訪れるのは風変わりな客か、それでも……?
春眠不觉晓之中,拜访他的是不同寻常的客人吗,还是……?

注释

  1. 槌之子,“つちのこ”,是日本的一种类似蛇的传说生物,外型类似槌。
  2. 原文为“節分”,即季节交替的日子。土用即中国的“长夏”,为春夏秋冬每个季节的最后18天,与节分的含义相似,参考了天空璋的用词,使用该词语代替。
  3. 日语中“月亮和乌龟(月と鼈)”是指两个事物相互之间鲜有共同点;因为它们两者除了都是圆的之外就几乎没有共同点了。
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