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東方海恵堂~Marine Benefit./海恵堂異聞:Migration to the conceptual sea./海探抄/缠之二

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< 缠之一   海探抄   九頭竜抄之一 >



「なにもなくていい………ぜいたくはいいません…ただ、ふつうに………へいおん、に………ぁ」



フワッ………
 言葉が途切れる間際、私は何かに抱き締められるのを感じた。柔らかいその感触に、私は顔を拭う事もせず、ただ意識の途絶えるままに身体と顔を委ねた。

「………つくし、だいじょぶだし。泣いてるあたしを助けてくれたつくしを、今度はあたしが守るし…」

「てんぴょ……ちゃ………」

 天平ちゃんの優しい声と、私の頭を撫でるひんやりした手に、私は小さな子どものようにしゃくりを上げながら顔を埋めた。

「…知らなかった、アタシに優しくしてくれて、アタシをお姉から助けてくれたつくしが、そんな事になってたなんて」

「あっしから助けられた…は、なんか釈然としやせんが、まぁそういうことでやすね。欲深い人間ならではのお話でやんしょ」

「やはり、現人神とは、現世の人間には過分な魅力であり、欲望の矛先なのでしょうか」

「あっしからはなんとも言えやせん。あっしら姉妹はまだ人間を知りやせんから」

「ねぇ…ねぇ京雅お姉、海琴様。アタシ、つくしを助けたいしっ!アタシを助けてくれたつくしを、今度はアタシが助けたいしっ!」

「それ、さっきも言ってやすよ?」

「天平…」

 まどろみの中で、私は天平ちゃんの胸に体を預けたまま、意識半分で話を聞いていた。次第に話し声は人数を増していって、春慶さんや鈴竹さんらしい声も聞こえてきくる。そして、言葉が混ざりあうように飛び交う中で、私にも…おそらく他の方々にも同じように聞こえてきただろう声が、その話し合いを鎮めた。


"それなら事は簡単だね"


 まどろみの中で聞きなれない声が飛び込んできて、私は薄く開いた目で様子を探る。そこには、何処と無く幾何学的な紋様の着物を着た、小さな少女の姿があった。

「乙姫様、今の様子を見ていらしたんですか?」

「もちろん!むしろ最初からずっと見ていたよ。具体的には新しい海恵堂を建立する前からずっとね………お久しぶりかな、檍原つくしちゃん?」

 そう言って、乙姫様と呼ばれている少女が薄目で様子を見ていた私の顔を覗き込む。その顔を見ながら、私はとっさに数ヶ月前の奇妙な出会いを思い出した。
―――


 海岸から海を眺める、寒々しい季節には不釣り合いな、真夏を思わせる格好をした女の子。傍らに大きな旅行かばんを携えていたその少女に、私は不思議と声をかけていた。
(あの、観光のお客様ですか?)

(ん?あぁごめんごめん、風の音で聞き取れなかったんだ。君はここの人なのかな?)

(いえ、私も通りすがりの学生です。あなたは旅行ですか?)

(まぁそんな所かな。この辺の地理に詳しい人がいれば色々と聞きたいと思ったんだけど)
―――


 そう、海が窪んで、私が違和感を感じる直前。私が出会ったあの少女そのものだった。その事実に、急激に意識が揺り戻されて、私は身体を起こそうとする。しかし

「あ、あなた………は…ぅ」

「つ、つくしっ!?急に起きちゃ駄目だしっ!?」

 起こした身体は、私の思った通りには動かず、急に倒れて天平ちゃんの懐に収まってしまった。

「まぁまぁ落ち着いて、今は満身創痍の身体を労るべきだよ。お話はそのままでも聞けるでしょ?」

「は、はぁ」
 あの日の少女と、天平ちゃんの懐の心地よさに、私はそのままの姿勢で話を聞くことにした。

「それで乙姫様。本当にそれで、つくしはへいおん?に暮らせるし?」

「まあね。地上で人間に脅かされることに恐怖しているのなら、地上にいなければいい。なんだったら、一緒に逃避してきた両親もここに住んでくれれば地上で脅かされることは…」

「そ、それはちょっと待って下さい。流石に話が飛びすぎてて………まず、私はまだ何も快い返事をしていません」

 そもそも、雰囲気に流されて忘れていましたが、私はまだ、この海恵堂の巫女になるという件を承諾していません。それに

「どうして、皆さんはそこまでしてくれるんですか?私の事情を理解して、人魚に海神という異種の方々ではありますが、私を匿うような…」
「それは、割と単純な答えだよ」

 私の質問に、乙姫と呼ばれている少女が答えた。

「私達…私はともかくとして、海琴達は誰かに知られていないと生きていられない。そこに綿津見を携えたあなたがやって来た、あなたを取り入れて十分な力を保とうとした…とてもビジネスライクな理由でね」

 乙姫様の言葉に、海琴様や他の方々が静かに頷く。

「そしてあなたは今まで人間のふりをした悪意に自分の心身を脅かされて、これ以上何かに邪魔されない暮らしを欲している。とても純粋なお願いとしてね。でしょ?」

 続いた乙姫様の言葉に、私は静かに頷く。

「その二つの考えが、今この場所でパズルの最後のピースみたいに嵌ったから、私や海琴からあなたに提案をしているのよ。あと、ここに住み込まなくても大丈夫。あなたが海琴達を知っているだけでも十分だし、時々ここに立ち寄ってくれればそれはもうすごいパワーよ!」

 乙姫様の言葉に続いて、海琴さんが重ねて話をする。

「つくしさんが海恵堂の巫女になるのであれば、我々はそれを歓迎し、貴女が不自由しないように取り計らいます。貴女が貴女の家を恨むのなら、私と、貴女の中津綿津見様の神徳を借りて、そんなものは無かった事にだってして見せましょう」

「あっ、私も手伝おっか!バタフライエフェクトで軽く更地にするくらいなら!」

「あの………ちょっと、待って…」
 突然湧いてきた不穏な発言に、思わず手を伸ばしてお二人を制してしまいました。やはりお二人も、そして周りにいる皆さんもやはり人間ではない方々のようです。普通の人間ならこの話を聞いて恐れおののくのでしょうけど、

「貴重な人間を我が物にしようとするなんて、私が出ていって波に呑ませちゃおうかしら?」

「春慶。波の話は現代のお人には不謹慎でありんすよ」

「それ、私の能力のかなりの部分が否定されるんですけど?」

 さすがは海に暮らす人魚の方々です。考え方の根本は妖怪なのでしょう。

 そして、私がそんな皆さんの様子を窺っていると、乙姫様が続いて私に話しかけてきた。

「さて、冗談は置いといて…それで、つくしちゃんはどうする?私達の事は忘れて、そのまま地上でただの人間として”アレ”を警戒しながら生きるか、それとも、海恵堂を見守る人間の任を受けて、堂々と現人神として居られる環境を手にするか…」

 乙姫様が、私の目を見てそう言った。近くでまじまじと見つめていた乙姫様の目には、まるで天の川を描いたような星のような模様が並んでいる。いや、模様と言うにはあまりにも鮮明な…むしろ、乙姫様の瞳の中に宇宙と世界が封じ込められている…そんな錯覚さえ感じる。
 そして、そんな宇宙のような目でニパッと笑って私に問う。

「どうかな?私の意地悪な二択」

「………本当に、意地悪な二択ですね。自分が望む方に誘導する実に意地悪な二択です」

「じゃぁ、せっかくだからその二択に乗ってみてはくれないかな?きっと悪いことには…あー…多分ならないと思うよ?」

「ふふっ…意地悪な二択を強いたのに、自信は無いんですね」

 それなら、その二択は…




































 海上異変から早一ヶ月、海岸沿いを歩きながら海を眺める。

「じゃあまた明日ねー」

「あ、はい!また明日!」

 学友の皆さんとさよならの挨拶をして、私は海に向かっていった。

「………それでは行きましょうか、綿津見様」

 私の中の綿津見様に一声かけると、身体は泡に包まれて、私は海の上を滑るように進んでいく。

 しばらく沖まで進んだら、身体の力を抜いて私は海の中に沈んでいく。"そこ"にある海恵堂を目指して………
………


 私は人間としての生活を送りながら、海恵堂に立ち寄っては巫女のようなお仕事をしています。

 結局、乙姫様の二択の思惑に乗って、私は海恵堂を見守る人間…肩書としては”海琴様の巫女”になることを選びました。何をすればいいのかと海琴様や乙姫様に問うてみましたが

(何もする必要はないかと)

(特別なことはしなくていいよ?)

(えぇ…?)

 と、楽観極まりないお返事をいただきました。もうちょっと危機感があったような気がしたんですが、杞憂だったのでしょうか?

 そして、私がそんな選択をしたことを両親にも伝えて、海琴様が上陸をして両親にお話をしました。最初は両親もキョトンとしていて、私や海琴様の話に付いていけてないようでしたが、私達家族の境遇に手助けをするという海琴様の旨、今までの暮らしを可能な限り尊重するという名目での”約束”、そして何より私が自分で選択した進路を尊重するという点から、両親も納得してくれました。神様とか妖怪とか、そういう部分については、私の存在があるから疑うのも野暮だと両親は言っていました。
………


「さて」

 私は、お休みの日には時折海恵堂に顔を出し、海の姉妹の皆さんと色んなお話や巫女としてのちょっとした修行をしています。まぁ、修行と言うにはあまりに呑気で、やっていることは”綺麗な弾幕の見せあい”ゲームです。春慶さんの弾幕はいつも綺麗です、はい。

「つくしー!」




「天平ちゃん!」
 泡を立てて私に駆け泳いでくる天平ちゃん。人魚のヒレを呼び出して海恵堂の城下町を魚雷のように真っ直ぐ泳いでくる天平ちゃんに、私は今日はどちらに避けようかと考えながら声をかけます。

 天平ちゃんは相変わらず海恵堂の城下町で門番を任されています。けど、そこにはあやおりちゃんとすいめいちゃんもいて、海恵堂の玄関は三人の人魚によって守られています。私が海恵堂を見守る人間になったことで、海上に噂を立てる必要がなくなりましたからね。
「 天平お姉ちゃんはつくしさん好きよねー」

「つくしさんもまんざらじゃないものね~」
 そして、一番最初の動機だった、地上の町の海上異変は、海恵堂の住人が海の中に入ったことで自然と風化していき、町の皆さんも普通の人間的な暮らしをしています。今の海は、少なくとも海恵堂を介した異変には襲われておらず、漁師さん達の活動も異変以前と同じように活発になりました。
………


現世の地上の海上異変、深海の龍宮城”海恵堂”の存亡、そして、檍原の現人神は海神の巫女に昇華した。


いいことだいいことだ。大変にいいことだ。


それじゃあそろそろ、オレたちもその話に加わらせてもらおうか。


いい加減、オレもお前も退屈してたんだもんなぁ?


さて


おい、深海の巫女さんよ。


”冥海”に興味はないかい?








海恵堂異聞:Migration to the conceptual sea.
”遷宮抄・海探抄”…ALL STAGE CLEAR!!
And continue toEXTRASTAGE...